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コラム | 2026年7月8日

荷待ち時間をデータで証明する
—物流効率化法の報告義務に対応する庫内計測の始め方

庫内計測のイメージ図
この記事でわかること
・物流効率化法が定める「荷待ち時間」の法律上の定義と算定ルール
・倉庫(着荷主・倉庫業者)として計測すべき具体的な時刻・項目
・「記録がない」状態から始める庫内計測の3ステップ
・出荷完了時刻のデータ化が報告対応と現場改善を同時に進める理由

国交省のトラック輸送状況実態調査(令和2年度)によると、荷待ち時間を把握していない荷主は43.9%にのぼります。つまり「荷待ち時間を削減しろと言われても、そもそも今どれくらい待たせているかわからない」——そういった状況が実態として起きているわけです。

2026年4月から、改正物流効率化法に基づき、一定規模以上の特定事業者には実績把握や定期報告などの対応が求められるようになりました。問題は「削減すること」だけでなく、「計測して証明すること」が求められている点です。改善できているかどうかを、感覚ではなく数値で示さなければなりません。

本記事では、法律が定める荷待ち時間の定義を整理したうえで、倉庫現場が「何を・いつから・どうやって」計測すればいいかを具体的に解説します。

法律が定める「荷待ち時間」とは何か

まず前提として、法律上の「荷待ち時間」の定義を正確に理解しておく必要があります。感覚的に「ドライバーを待たせている時間」と理解している方も多いですが、法令上の算定には細かい条件があります。

📋 物流効率化法における荷待ち時間の定義

荷待ち時間とは、「ドライバーが到着した時間から、荷役等(荷積み・荷卸し)を開始した時間までの待ち時間」を指します。

算定にあたっては、到着形態によって起算点が異なります。

  • 時間帯を指定して到着した場合(指示時刻より早く着いた場合):指示時刻から荷役開始までの時間。到着から指示時刻までの待機は含まない
  • 指示時刻通りに到着した場合:到着時刻から荷役開始までの時間
  • 遅れて到着した場合:到着時刻から荷役開始までの時間。遅延によって生じた待ち時間は含まない

また、法律が目標として掲げているのは「1運行あたりの荷待ち時間・荷役等時間の合計を2時間以内、1回の受け渡しごとに1時間以内」です。

出典:国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト、同「特定事業者向け対応手引き」

ここで重要なのは、倉庫(着荷主・倉庫業者)の側が記録しなければならないのは「荷役を開始した時刻」だということです。ドライバーが「何時に着いたか」は運送会社が記録していますが、「何時に荷役を始めたか」は倉庫側の記録なしには算定できません。

倉庫が「荷待ち時間を把握できない」本当の理由

国土交通省「トラック輸送状況の実態調査(令和2年度)」では、着荷主に対して配送先での荷待ち時間の把握状況を質問したところ、「把握していない」が43.9%と最大割合を占め、「発生しているが時間まで把握していない」(14.5%)と「発生しており時間を把握している」(5.7%)を合わせても2割に届きませんでした。同様の傾向は令和3年度調査でも確認されており、「把握していない」は48.2%と約半数に達しています。

荷待ち時間の発生を認識していた荷主は約2割にとどまり、そのうち時間まで把握していた事業者は5.7%でした。この実態を受け、国はトラック事業者側にも荷待ち時間の記録を求める制度を整備し、2017年には一部車両、2025年4月には対象を全車両へ拡大しました。記録義務をドライバー側に課さざるを得なかった背景には、荷主・倉庫側の把握体制が整っていないという構造的な問題があります。

荷待ち時間を算定するためには、「荷役開始時刻」の記録が不可欠です。到着時刻はデジタコや乗務記録など運送事業者側でも記録されることが一般的ですが、「何時に荷役を始めたか」は倉庫側の記録なしには算定できず、報告義務への対応も困難になります。

▼ データが把握できていない現場の実態
  • 荷待ち時間が発生しているかどうかを認識していない
  • 荷役開始時刻が記録されておらず、荷待ち時間を後から算定できない
  • 荷待ち時間の把握をドライバーの乗務記録に頼っており、倉庫側の独自記録がない
  • 荷待ちが発生してから初めて気づく——事前に予防する手段がない
  • 定期報告のたびに過去の記録を手作業で集計し直す
▲ データで管理できる現場
  • 受付・荷役開始・荷役完了の時刻が自動記録される
  • 繁忙時でも記録が途切れない仕組みがある
  • 施設ごと・時間帯ごとに荷待ち実績を集計できる
  • 出荷進捗から荷待ち発生を事前に予測できる
  • 定期報告用のデータを随時出力できる

倉庫が計測すべき時刻・項目の整理

法令の報告義務に対応するために、倉庫として最低限記録すべき時刻と、改善を進めるために追加で把握すべき項目を整理します。

記録項目 算定・計測上の役割 活用目的
車両受付時刻
(ドライバーが受付に到着した時刻)
算定に必要 荷待ち時間算定の起点となる時刻
荷役開始時刻
(実際に荷積み・荷卸しを開始した時刻)
算定に必要 荷待ち時間算定の終点となる時刻
荷役完了時刻
(荷積み・荷卸しが終わった時刻)
算定に必要 荷役等時間算定の終点となる時刻
出荷完了時刻(工程別)
(ピッキング・梱包・検品の完了時刻)
改善必須 荷待ちの根本原因を特定するために必要。「どの工程が遅れて荷待ちを生んだか」を追跡できる
カットタイムとの差異
(出荷締め切りに対する実績の乖離)
改善必須 遅延が常態化している出荷方面・時間帯を特定し、対策を優先できる

法令への「報告対応」だけを目的とするなら、受付・荷役開始・荷役完了の3点を記録すれば最低限の要件は満たせます。しかし、それだけでは「なぜ荷待ちが発生したか」は説明できません。改善に結びつけるには、庫内の出荷進捗データとセットで見る必要があります。

「記録がない」状態から始める3ステップ

1
まず「今どれくらい待たせているか」を1ヶ月計測する

最初のステップは、現状把握です。受付簿・日報・WMSのログなど、すでに存在する記録を洗い出し、受付時刻と荷役開始時刻の両方が揃っている記録がどれだけあるかを確認します。

記録が揃っていない場合は、まず手書きの記録用紙でも構いません。「車両受付時刻」「荷役開始時刻」「荷役完了時刻」の3点を1ヶ月記録し、荷待ち時間の平均・最大値・施設別の分布を集計します。この段階で「思っていた以上に待たせている」という現実が数値として見えてくることが多いです。

注意:手書き記録の場合、繁忙時に記録が省略されるリスクがあります。省略された記録は荷待ち時間が短く見える方向にバイアスがかかるため、正確な現状把握にはデジタル記録への移行が推奨されます。
2
荷待ちが長い「時間帯・出荷方面」を特定する

1ヶ月分のデータが揃ったら、荷待ち時間を曜日・時間帯・出荷方面別に集計します。多くの現場では、「午後2〜4時に荷待ちが集中する」「特定の出荷方面のトラックだけ常に30分以上待っている」といったパターンが見えてきます。

このパターンを庫内の工程データと照合することが重要です。「その時間帯に梱包工程が詰まっていないか」「その出荷方面のピッキングが後回しになっていないか」——荷待ちの原因は常に庫内の作業状況にあります。庫内データなしに荷待ちを減らすことはできません。

3
出荷完了予測を「到着時間調整」として活用する

荷待ち時間を構造的に減らすには、「ドライバーが来てから作業を急ぐ」という後手の対応を「作業が終わりそうな時刻にドライバーに来てもらう」という前向きの対応に変えることが本質です。

そのためには、出荷完了予測時刻を事前に把握し、バース到着時刻の調整に使える状態にすることが必要です。工程別の処理ペースと残数から「あと何分で出荷準備が完了するか」をリアルタイムで計算できれば、出荷完了予測を運送会社との到着時間調整に活用できるようになります。これが、荷待ち削減の最もダイレクトな手段です。

ポイント:出荷完了予測は「精度が高いほど効果が大きい」です。精度を上げるには、工程別の処理スピード(スループット)の実績データが必要です。日々の計測データが蓄積されるほど予測精度が向上し、荷待ち削減効果も大きくなります。

報告義務対応と現場改善を同時に進めるデータ設計

「報告のためのデータ」と「改善のためのデータ」を別々に集めようとすると、現場の負担が二重になります。最初からデータを一元化する設計が重要です。

WMSや作業実績システムが工程別の出荷完了時刻を記録している場合、バース受付システムの「車両受付時刻」と照合することで、荷待ち時間の算定と庫内ボトルネックの特定を同一のデータから行えます。こうした連携が整っている環境では、記録の手間を増やすことなく、報告義務と現場改善の両方に対応できます。

この設計が機能するためには、庫内の工程別進捗データがリアルタイムで取得できる環境が前提になります。WMSのデータが日次バッチ処理で翌朝にしか確認できない環境では、当日の荷待ち発生を事前に防ぐ手段がありません。

Nexa Warehouse-Optimizerの予実管理機能との接点

Nexa Warehouse-Optimizerの予実管理機能は、既存のWMS・WCSデータをもとに、工程別の進捗率・残数・作業完了予測時刻をリアルタイムで算出します。カットタイム(出荷締め切り時刻)との比較で「順調/注意/警告」の3色アラートを自動表示するため、荷役開始前の時点で「今日は間に合うかどうか」が判断できます。

荷待ち時間の削減という観点では、「荷役開始時刻の記録」は事後的な証明に使えますが、荷待ちを未然に防ぐには事前の出荷完了予測が不可欠です。予実管理機能が生成する作業完了予測データは、荷待ち時間削減に向けた判断材料として活用できるほか、法令対応に必要なデータ整備だけでなく、継続的な現場改善を支える基盤としても活用できます。

荷待ち時間の計測・削減、まず何から始めるべきかお困りの方へ

Nexa Warehouse-Optimizerは、既存の作業データをもとに工程別進捗・作業完了予測・カットタイムアラートをリアルタイムで提供します。物流効率化法対応に向けたデータ整備の第一歩として、まずはお気軽にご相談ください。

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