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コラム | 物流データ活用 第8回 | 2026年9月23日

改善して、本当に良くなったのか?
——効果測定と、次の計画への折り返し

効果測定と、次の計画への折り返し

前回、遅れ30分でフロア責任者が2名動かす、という判断ルールを作りました。運用を始めて1か月。振り返りの場でこういう会話になります。

「配置を変えるようになってから、だいぶ良くなりましたね」

「そうですね。現場も慣れてきました」

悪い会話ではありません。ただ、これで終わると次につながりません。何がどれだけ良くなったのかが数字で言えなければ、その施策を他の拠点に広げる根拠にもならず、逆に効いていない施策を続けることにもなります。

この回で扱うこと
・施策 → 結果 → 効果を、数字で通す
・その改善は、本当に施策によるものか(この回の山場)
・条件を揃えるための、現実的な工夫
・測れる施策にするために、始める前に決めておくこと
・効果測定と予実管理は、どう違ってどうつながるのか

施策 → 結果 → 効果を、数字で通す

まず、いちばん基本的な形を確認します。人員配置の見直しを行った現場の例です。

改善前(1か月平均)
処理量10,000ピース/日
投入人時100人時/日
人時生産性100ピース/人時
締め遵守率82%
改善後(1か月平均)
処理量10,000ピース/日
投入人時90人時/日
人時生産性111ピース/人時
締め遵守率95%

同じ処理量を、10人時少なく終えられるようになった。投入人時は10%削減され、人時生産性は11%向上、締め遵守率は13ポイント改善。「良くなった」が、こう表現できると話が変わります。10人時/日は月20営業日で200人時。ここに人時あたりの単価をかければ、金額としても示せます。

ここで意識しておきたいのは、効果を何の単位で語るかです。

効果の単位 向いている場面
人時・人数 現場の改善報告として最も伝わりやすい。同じ量を少ない人時で処理できたか
時間(完了時刻・遅延) 締めを守れるようになったか。出荷品質としての改善はこちらで語る
金額 投資判断や経営への説明。人時単価、残業単価、車両の待機コストなどに換算する
率(遵守率・欠品率) ばらつきを含めて評価したいとき。平均は同じでも、外す日が減っていれば改善

複数の単位で見ておくと、片方だけ良くなっている状態にも気づけます。たとえば生産性は上がったが締め遵守率は変わっていない、という場合、施策は効率には効いたが遅延の原因には届いていないことになります。

この回の山場——その改善は、本当に施策のおかげか

ここまでは計算の話です。難しいのはここから先です。生産性が11%上がったのは、配置ルールを変えたからでしょうか。

他の説明が、いくつも成り立ちます。

「効いた」と言う前に、必ず確認したい5つ
01 物量が減っていないか 物量が少ない月は、忙しさそのものが違う。逆に極端に少ないと段取りの比率が上がって生産性は落ちる
02 オーダーの中身が変わっていないか バラ出荷が減ってケース出荷が増えていれば、同じピース数でも作業は軽くなる
03 人の構成が変わっていないか 前月に入った新人が習熟した、ベテランの比率が上がった。施策とは無関係に生産性は上がる
04 時期の影響を受けていないか 繁忙期を抜けた、連休がなかった、天候が安定していた。季節性のある現場では特に大きい
05 同時に他のことも変えていないか 配置ルールと一緒にロケーションも見直した、資材置き場も変えた。どれが効いたのか分けられなくなる

第4回で「条件を揃えて比べるのは難しい」と書きました。原因分析のときは、それでも「次に確認する場所を絞る」ところまでで足りました。効果測定では、この難しさが正面から効いてきます。効果を過大に見積もれば、効いていない施策を全社に展開してしまいます。過小に見積もれば、良い施策を捨てることになります。

効果測定でいちばん難しいのは計算ではなく、
比べてよい2つを選ぶことです。

条件を揃えるための、現実的な工夫

研究のように条件を統制することはできません。それでも、実務でできることはあります。

1. 単位を「原単位」にする

合計値ではなく、1ピースあたり・1オーダーあたりの人時で見ます。物量の増減の影響をかなり打ち消せます。第2回でKPIを分子と分母に割ったのは、こういう場面でも効いてきます。

2. 条件の近い日だけを取り出して比べる

1か月平均どうしを比べるのではなく、物量が9,500〜10,500ピース、バラ比率が近い日だけを改善前後から抜き出して比べます。日数は減りますが、比較の信頼性は上がります。「その2群で、物量とオーダー構成はほぼ同じでした」と言えることが重要です。

3. 期間を長く取る

1週間の比較では、たまたま良い週・悪い週を拾ってしまいます。ばらつきの大きい現場では、1か月以上を見たほうが安定します。第3回で見た振れ幅の大きさが、そのまま必要な観察期間の長さになります。

4. 一部だけに適用して、同時期で比べる

可能であれば、これがいちばん強い方法です。フロアAだけに新しい配置ルールを入れ、フロアBは従来どおりで運用する。同じ時期・同じ物量傾向のなかで比較できるため、時期や物量の影響を大きく取り除けます。工程単位でも、拠点単位でも成り立ちます。

5. 施策以外の変更を、記録しておく

「4月14日、資材置き場を変更」「4月20日、新人3名配属」。こうしたメモが残っていれば、後から効果を分解できます。前回「動かした記録を残す」と書いたのは、この場面のためでもあります。記録がなければ、1か月後には何を変えたのか誰も正確に思い出せません。

測れる施策にする——始める前に決めておく

ここまで読むと分かりますが、効果測定は施策を始めた後では手遅れになりがちです。始める前に3つ決めておくだけで、後の議論が変わります。

決めること 具体例
何で測るか 1ピースあたり人時と、締め遵守率。この2つで判断する(指標を後から選ぶと、都合の良い数字を選んでしまう)
いつ判断するか 1か月後に振り返る。それまでは途中の数字で一喜一憂しない
何と比べるか 直前1か月の同条件日、または同時期の他フロア。比較相手を先に決めておく

特に1つ目は重要です。指標を後から選べる状態だと、良くなった数字を探すことになります。それは効果測定ではなく、結果の説明です。

効果測定と予実管理は、同じものではない

混同されやすいので、整理しておきます。

  予実管理 効果測定
見るもの 計画と実績の差 施策によって何が変わったか
頻度 日次・週次で継続的に 施策ごとに、区切って
問い 計画どおり進んでいるか この打ち手は効いたのか

「計画に対して実績が上振れした」ことは、施策が効いた証拠にはなりません。計画が甘かっただけかもしれません。逆に、施策が効いていても、計画がそれ以上に強気なら未達になります。予実の差と、施策の効果は別の話です。

ただし、この2つは無関係ではありません。

計画と実績の差を確認することは、単なる進捗管理ではない。その差がなぜ生じたのかを振り返り、次の計画に反映することで、予実管理は改善サイクルの一部になる。

差を見て終われば、予実管理は報告です。差の理由を第4回の手順で掘り、必要なら第7回の判断ルールを見直し、次の計画の前提そのものを更新する。ここで予実管理は、改善サイクルの入口に変わります。

効果測定の結果は、次の計画の前提になる

生産性が111ピース/人時で安定したなら、翌月の要員計画はこの数字で立てられます。第6回のシミュレーションの前提も、111に更新されます。つまり効果測定の出力は、報告書ではなく次の計画のパラメータです。ここが、この回のいちばん重要な折り返し点です。

効果がなかったときこそ、測った価値がある

1か月やってみて、同条件で比べたら生産性は変わっていなかった——これは失敗の報告ではなく、「この打ち手はこの現場には効かない」という確定した知見です。次に同じ手を選ばずに済み、別の打ち手に時間を使えます。

測っていなければ、効かない施策を「なんとなく効いている気がする」まま続けることになります。効果測定の価値の半分は、こちら側にあります。

まとめ——効果を測らない改善は、次の改善に使えない

Level 6「回す」の前半に来ました。動かした結果を測り、それが本当に施策によるものかを確かめ、次の計画の前提に反映する。ここまでできると、改善は一度きりのイベントではなくなります。

そして測るためには、施策の記録が必要で、記録のためには判断が実行されている必要があり、判断のためには予測が必要で、予測のためにはデータが整っている必要がある。気づくと、シリーズがひと回りしています。

次回(最終回):ゴールは分析ではない——データが改善サイクルになるまで

計画 → 現場 → 実績データ → 分析 → 判断 → 施策 → 結果 → 効果測定 → 次の計画。

最終回は、この一周そのものを主役にします。そして第1回で示した活用の6段階に戻り、自社の現在地と、次に上がる一段を確認して終わります。
効果を測れる状態にあるか、ご相談いただけます

物量やオーダー構成を揃えた比較ができるか、原単位で追えるか、施策の記録が残っているか——「良くなった気がする」を数字にするための土台づくりから支援します。

「改善はしているが、効果を説明できない」という段階からでもご相談いただけます。

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