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コラム | 物流データ収集入門 第1回 | 2026年8月3日

物流改善は何を記録すれば始められるのか?
─KPIから逆算するデータ収集設計

倉庫内でタブレットを操作する作業員とデータが可視化されたイメージ
この記事でわかること
・物流改善のためにまず記録すべきデータとは何か
・「取れるデータを全部取る」がうまくいかない理由
・改善したいKPIから逆算してデータ収集項目を決める考え方
本記事は「物流データ収集入門」シリーズの第1回です。全9回を通じて、物流現場の改善に必要なデータをどう集め、どう品質を保ち、どう分析につなげるかを解説していきます。

倉庫では毎日大量のデータが生まれています。しかし、それらが改善につながる分析にそのまま活用できるとは限りません。

物流DXの文脈で「データ活用」や「データ分析」という言葉を目にする機会が増えています。しかし、分析の前にはデータを集める工程があり、何を集めるかを決める設計工程があります。この設計がなければ、データを集めても改善につながる分析に使えないという状況が起きます。

本記事では、物流改善の第一歩として「何を記録すればいいのか」を考える方法を整理します。

本シリーズでは、このような「物流改善に必要なデータを設計・収集し、分析できる状態に整える考え方」を「物流データ収集」として解説します。

1. 「取れるから取る」では改善につながらない

倉庫にはすでに多くのデータが存在します。WMSの出荷実績、ハンディ端末のスキャンログ、マテハン設備の稼働ログ、入退室記録、温湿度センサーの値――取ろうと思えば取れるデータは膨大です。

しかし「取れるデータをとりあえず全部集めよう」というアプローチは、多くの場合うまくいきません。データ量が増えるほどストレージ・通信のコストがかさみ、機器の保守運用の負荷も増えます。そして何より、集めたデータの大半が分析に使われないまま放置されるという結果になりがちです。

データ収集は「取れるかどうか」ではなく、「何のために使うか」から設計する必要があります。

2. 改善したいKPIが、必要なデータを決める

データ収集の出発点は、「何を改善したいか」という問いです。改善の対象が決まれば、それを測定するKPIが決まり、KPIを算出するために必要なデータ項目が逆算できます。

たとえば「人時生産性」を改善したい場合を考えてみます。

人時生産性は「処理数 ÷ 投入人時」で計算します。算出方法は現場によって異なりますが、一般的には最低限、次のようなデータが必要になります。

  • 作業開始時刻:工程ごとに作業が始まった時刻
  • 作業終了時刻:工程ごとに作業が終わった時刻
  • 投入人数:その工程に何人配置されていたか
  • 処理数量:その工程で処理されたケース数・行数など

実際の現場では、休憩時間の控除、応援要員の按分、間接作業の扱いなど運用ルールに応じて追加のデータが必要になることもあります。しかし、この基本4項目が継続的に記録されていれば、人時生産性を客観的に把握・改善するための土台になります。

ここで重要なのは、人時生産性の算出にPLCのような100ミリ秒単位の制御データを常時保存する必要はないということです。必要なのは、工程ごとの開始・終了時刻と、人数・数量という基本項目が正確に記録されていることです。

3. KPI別に必要なデータを整理する

同じ考え方で、倉庫改善によく使われるKPIごとに代表的なデータ項目を整理すると、次のようになります。

改善したいKPI 代表的なデータ項目
人時生産性 作業開始/終了時刻、投入人数、処理数量
出荷遅延率 出荷カットタイム、出荷予定時刻、作業完了時刻
工程別スループット 工程ごとの処理数、作業時間
誤出荷率 出荷件数、誤出荷件数(検品記録)
荷待ち時間 車両到着時刻、受付時刻、荷役開始/終了時刻、退場時刻

※実際には現場の運用や計測粒度によって必要な項目は異なります。ここでは代表的な例を示しています。

どのKPIも、代表的なデータ項目は意外と少ないことがわかります。重要なのは、データの「量」ではなく、必要な項目が正確に・継続的に記録されていることです。

4. まず1つのKPIから始める

すべてのKPIを一度に計測しようとすると、現場への負荷が大きくなり、導入が進まないリスクがあります。人時生産性のように改善効果が把握しやすいKPIから始める企業も少なくありません。まずは1つのKPIに絞り、必要なデータ項目の記録から始めることで、データ収集と分析のサイクルを小さく回すことができます。

1つのKPIでサイクルが回り始めれば、そこで得た知見や仕組みを他のKPIへ横展開できます。

KDDIの物流センターでの取り組み
KDDIの物流センターでは、人時生産性を可視化し、その結果をもとに人員配置を見直すことで、出荷能力1.4倍という成果を確認しています。最初から大量のデータを集めたわけではなく、改善に直結する指標にフォーカスしたことが成果につながっています。

まとめ:データ収集の目的はデータを増やすことではない

データ収集で最初に決めるべきことは、「どの機器を導入するか」でも「どの通信方式を使うか」でもありません。「何を改善したいか」、そして「そのために何を記録すべきか」です。

改善したいKPIが決まれば、必要なデータ項目は自ずと絞られます。そしてデータ項目が絞られれば、収集の仕組みも現実的な規模で設計できます。

データ収集の目的は、データを増やすことではありません。
現場改善に必要なデータだけを、分析できる形で残すことです。
次回は、データ収集設計をさらに掘り下げ、「収集項目・粒度・頻度をどう決めるか」のフレームワークを整理します。
「何を記録すべきか」からご相談いただけます

Nexa Warehouse-Optimizerは、WMSや設備から収集したデータをもとに人時生産性・工程別スループット・出荷進捗などのKPIを可視化する分析基盤です。
どこから始めればよいか分からない段階でも、現在の運用状況をもとにご相談いただけます。

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