人時生産性とは?
―計算式・改善方法・倉庫での活用事例をわかりやすく解説
「現場はいつも忙しそうなのに、本当に生産性が上がっているのかわからない」——多くの物流倉庫の管理者がこの問いを抱えています。その答えを出すための指標が人時生産性です。本記事では、計算式の基本から、単位の決め方、改善のために必要なデータ活用まで、実務目線で整理します。
・人時生産性の定義と計算式
・分子・分母に何を入れるか(実務で最も判断が分かれる論点)
・どの粒度で測ると何が見えるか
・改善の3ステップと、倉庫での活用事例
・自社の人時生産性を、その場で試算できるシミュレーター
人時生産性とは
人時生産性とは、作業者1人が1時間あたりにどれだけの成果(アウトプット)を出したかを示す指標です。物流業界では、国土交通省が2015年に公表した「物流事業者におけるKPI導入の手引き」において、倉庫の庫内作業効率を測る代表的な指標の一つとして明示されています。物流現場では、ケース数・ピース数・行数・オーダー数など、倉庫で管理している単位を用いて算出します。
人時生産性 = 処理数量 ÷ 投入人時
投入人時 = 作業員数 × 作業時間(時間)
例)10名の作業員が8時間かけて4,000ケースをピッキングした場合
投入人時 = 10名 × 8時間 = 80人時
人時生産性 = 4,000ケース ÷ 80人時 = 50ケース/人時
この数値が高いほど、同じ人員・時間でより多くの出荷をこなせていることを意味します。
自社の人時生産性を計算してみる
計算式を読むより、自社の数字を入れてみるほうが早く掴めます。過去の実績(処理数量・作業人数・作業時間)を入力すると、人時生産性がその場で算出されます。続けて今日の出荷条件を入れると、締切に間に合うかどうかまで試算できます。
入力値はブラウザ内でのみ処理され、サーバーへの送信・保存は行いません。
今日の出荷、締切に間に合いますか?
過去の実績と今日の物量・人員から、出荷完了時刻を簡単にシミュレーションできます。
まず、過去の実績を入力してください
入力した実績から、1人・1時間あたりの処理能力を算出します。
以降の入力もすべて同じ単位でお願いします。
今日の出荷条件を入力
今日の出荷、間に合う?
までに終えるには?
シナリオA:人員を増やす
シナリオB:生産性を上げる
※ 必要人数・必要生産性は、締切までの時間をすべて実作業に充てる前提での試算です。
人員と生産性を組み合わせて試してみる
実際の倉庫では、工程ごとの配置も重要です
ただし、実際の倉庫では「人数」だけでは判断できません。ピッキング、仕分け、検品、梱包など、工程によって処理能力は異なります。
倉庫全体で20人いても、工程ごとの人員配置によっては、特定の工程がボトルネックになり、そこで全体の流れが止まってしまう可能性があります。
実際の倉庫の条件で試してみませんか?
Nexa Warehouse-Optimizerのシフトシミュレーションを使って、ピッキング・仕分け・検品・梱包など、工程ごとの人員配置と処理能力をもとにシミュレーションします。
シミュレーターで入力した「出荷量・人数・開始/締切時刻」は、無料診断フォームに引き継げます。
無料診断では、これに加えて工程ごとの人員配置・処理能力を入力します。
シミュレーターへの入力値は、シミュレーション中はブラウザ上でのみ処理され、サーバーへの送信・保存は行いません。
無料診断へ進む場合は、入力した一部の値をフォームに引き継ぎます。
実際の倉庫では、ピッキング・仕分け・検品・梱包で処理能力が異なり、どこか1工程が詰まれば全体が止まります。次の章では、この「どの粒度で測るか」を整理します。
分子と分母に、何を入れるか
計算式そのものは単純です。実務で判断が分かれるのは、分子(処理数量)と分母(投入人時)に何を含めるかです。ここが揃っていないと、拠点間でも月次でも比較できない数値になります。
分子:どの単位で数えるか
国土交通省「KPI導入の手引き」では、業態に応じた単位(ケース数・件数など)の設定が推奨されています。自社の出荷形態に合った単位を選ぶことが重要です。
| 単位 | 向いている業務 | 注意点 |
|---|---|---|
| ケース数 | ケース単位の出荷が中心の倉庫 | バラ出荷が混在すると実態と乖離する |
| ピース数 | バラピッキングが中心のEC・小売系 | 1オーダーあたりの点数の差が大きいと振れる |
| 行数(明細行) | 多品種少量で、ロケーション移動が作業量を決める倉庫 | 作業量との相関が高く、比較に使いやすい |
| オーダー数 | 出荷単位あたりの作業が定型化している倉庫 | オーダーの大小差を吸収できない |
どれが正解というものではありません。重要なのは、作業量との相関が高い単位を選び、一度決めたら変えないことです。単位を途中で変えると、過去との比較ができなくなります。
分母:どこまでを投入人時に含めるか
投入人時は「作業員数 × 作業時間」ですが、その作業時間に何を含めるかで数値は変わります。
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 休憩時間 | 含めないのが一般的。ただし拠点ごとに扱いが違うと比較できなくなるため、定義を統一する |
| 朝礼・準備・片付け | 実作業に含めるかを決めておく。除外すると生産性は高く出るが、実際の拘束時間とは乖離する |
| 待ち時間・手待ち | 含めて測るほうが実態に近い。除外すると、ボトルネックによる停滞が数値から消える |
| 間接作業(在庫確認・問い合わせ対応) | 工程別に測る場合は、どの工程に配賦するかを決めておく |
| 管理者・事務スタッフ | 庫内作業の生産性を測るなら通常は除外。ただし省人化の効果測定では含める判断もある |
工程をまたいだ集計になっていてボトルネックが特定できない、ピッキングと梱包をまとめて1つの指標で管理していて工程ごとの傾向が見えない——こうした状態では、数値はあっても改善の根拠になりません。
計算単位が業務の実態と合っているかどうかを、まず確認してください。
なぜ人時生産性が重要なのか
「忙しい」と「生産的」は別の話
倉庫現場では「全員フル稼働しているのに出荷が追いつかない」という状況がよく起きます。作業員がバラバラに動いていても忙しそうには見えます。しかし人時生産性で測ると、投入した人員に対してアウトプットが伴っていないことが数値で明確になります。
属人化からの脱却
人時生産性を工程別・作業員別・時間帯別に把握することで、「特定の作業員や時間帯にだけ生産性が低い」といった問題を特定できます。勘や経験に頼った現場管理から、データに基づく客観的なマネジメントへの転換が可能になります。
荷主・上層部への説明材料になる
国土交通省の手引きでは、KPIは荷主との改善活動や状況共有のための共通指標としても活用されています。「今月の庫内生産性は前月比5%改善しました」と数値で示せることは、取引関係の強化にも直結します。
どの粒度で測るか
人時生産性は、測る粒度によって見えるものが変わります。
| 粒度 | 把握できること | 活用例 |
|---|---|---|
| 全体(センター単位) | 月次・週次トレンド | 経営報告・目標設定 |
| 工程別(ピッキング・仕分け・梱包) | どの工程がボトルネックか | 設備投資・人員配置の根拠 |
| 作業員別 | 習熟度・スキルのばらつき | 育成計画・多能工化 |
| 時間帯別 | 繁閑の波動 | シフト設計・休憩タイミング調整 |
大手3PL事業者の中には、作業員の動線を測位装置やビデオで記録し、移動経路そのものを分析することで改善余地を特定しているケースもあります(国土交通省「KPI導入の手引き」事例より)。
人時生産性を改善する3つのステップ
ステップ1:まず「見える化」から始める
最初のハードルは、データを継続的に取得する仕組みを作ることです。WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行管理システム)から処理数・作業時間のデータを引き出すことができれば、集計の自動化も見えてきます。いきなり全工程を網羅しようとせず、投入人時の多いピッキング工程から始めるのが現実的です。
ステップ2:ボトルネック工程を特定する
見える化したデータから、人時生産性が低い工程・時間帯・作業員を特定します。この段階で重要なのは「なぜ低いのか」の原因まで掘り下げることです。単に「ピッキング生産性が低い」ではなく、「午後3〜5時の特定ラインで5%低下しており、AGVの搬送待ちや作業動線、応援要員の配置など、関連データとあわせて原因を分析する」というレベルの分析が改善につながります。
ステップ3:シフトと人員配置を連動させる
ボトルネックが明確になれば、次は対策です。人時生産性の向上に直結する施策の一つが、出荷物量に応じたシフト設計の最適化です。「その日の出荷目標を達成するために何人必要か」を事前に試算し、工程別に人員を配置することで、投入人時を無駄なく使えます。人時生産性の実績データをシフトシミュレーションに反映することで、必要人員の算出精度を継続的に高めることも可能になります。
実績:KDDI物流センターでの取り組み
KDDI株式会社の物流センターでは、Nexa Warehouse-Optimizerを活用したシフトシミュレーションと人時生産性の継続的な可視化を実施。2023年度の実証実験において、データ分析後の出荷量が従来比1.4倍を達成しました。2024年8月より商用利用を開始し、KPI可視化・シフト最適化・省人化に継続活用されています。
データで人時生産性を継続管理するために
人時生産性の管理が難しい理由の一つは、継続的なデータ収集と集計の手間です。国土交通省の手引きでも「KPI管理に必要な情報を集めるにはそれなりの時間・労力が必要」と指摘されており、WMSやWESを活用した効率化が推奨されています。
Nexa Warehouse-Optimizerは、倉庫内の出荷数量・作業工数・設備稼働データを自動集約し、人時生産性を工程別・作業員別・時系列でダッシュボード化します。既存のWMSを置き換えるのではなく、そのデータを受け取って分析機能を追加する設計です。
まとめ
人時生産性(処理数量÷投入人時)は、物流倉庫における現場改善の起点となる指標です。工程別・時間帯別・作業員別に継続的に測ることで、感覚や経験に頼っていた現場管理をデータドリブンに変えられます。
ただし、人時生産性だけで倉庫運営の良し悪しを判断できるわけではありません。在庫精度、出荷品質、納期遵守率などと併せて見ることが重要です。そのうえで、人件費という大きな運営コストを管理する入口として、最も基本的な指標の一つと言えます。
まず「どの工程から測るか」を決め、小さく始めることが成功の鍵です。
上のシミュレーターは倉庫全体をひとつの処理装置とみなした概算です。無料診断では、ピッキング・仕分け・検品・梱包など工程ごとの人員配置と処理能力をもとに、どの工程がボトルネックになるかまで確認できます。
自社の条件で、工程別に試してみる 導入のご相談は お問い合わせ から・国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」(2015年)
・国土交通省「(概要版)物流事業者におけるKPI導入の手引き」
・Nexa Warehouse-Optimizer KDDI物流センター導入事例