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コラム | 2026年7月17日

倉庫DXは通信インフラから始まる
—データを届けるネットワークの考え方

この記事でわかること
・なぜ「通信インフラ」がデータ活用の前提条件になるのか
・物流倉庫で起きがちな通信の課題と、その背景にある構造的な問題
・Wi-Fi・LTE・LPWA・プライベート5G——用途別の通信方式の選び方
・KDDIが製造業・物流業で取り組んできた通信×データ活用の事例

物流DXを進める際に語られるキーワードは、AI・WMS・データ分析・自動化といったものが多いです。しかし、これらすべての前提として機能するのが、現場のデータをクラウドへ安定して届ける通信インフラです。

通信が途切れれば、センサーのデータは届きません。Wi-Fiの電波が届かない場所では、ハンディ端末は使えません。倉庫の通信環境が整っていない限り、どれだけ優れた分析ツールを導入しても、分析対象となるデータが集まらないという状況が起きます。

本記事では、物流倉庫における通信インフラの現状課題と、用途に応じた通信方式の選び方を整理します。ネクサウェアの株主であるKDDIが製造業・物流業で取り組んできた事例も参照しながら、「データを届ける仕組み」の考え方をお伝えします。

通信インフラはデータ活用の「神経網」である

データ活用の流れを整理すると、次のようになります。

倉庫DXのデータフロー:設備・WMS・センサー → IoT Gateway → DWH(データウェアハウス:データを蓄積・統合する基盤) → Nexa Warehouse-Optimizer、下部をEthernet・Wi-Fi・LTE・5G・LPWA・閉域網の通信インフラが支える構成図

この流れの中で、通信は「神経網」のような役割を果たします。人間の身体が神経を通じて全身の情報を脳へ伝えるように、倉庫内の設備やWMSで発生したデータは、通信インフラを通じてDWH(データウェアハウス:データを蓄積・統合する基盤)へと届けられます。神経の伝達が滞れば適切な判断や行動ができないのと同様に、通信環境が整っていなければデータを収集・活用することはできません。

設備やWMSで発生したデータは、IoTゲートウェイを経由してDWHに蓄積され、その後Nexa Warehouse-Optimizerによって分析・可視化されます。この一連のデータ活用の流れを足元から支えているのが通信インフラです。IoTコラムで紹介した「まずはデータ収集から」という考え方がありますが、そのデータ収集を成立させるさらに前段の基盤が、通信インフラなのです。

多くの倉庫では、WMSやハンディ端末はすでに稼働しています。しかし「すでにシステムがある」ことと「データが安定して届いている」ことは、必ずしも一致しません。

物流倉庫でよくある通信の課題

物流施設では、建屋の構造や設備の影響から通信環境の整備が難しいケースも少なくありません。オフィスや店舗と異なり、倉庫特有の環境がデータ収集の障壁になることがあります。その背景にはいくつかの構造的な理由があります。

広大な床面積
1棟数万平方メートルに及ぶ大型倉庫では、Wi-Fiのアクセスポイントを適切に配置しないと電波の届かないエリアが生じやすい。
金属ラック・設備による電波遮蔽
高積みの金属ラックやマテハン設備が電波を遮り、見通し外の通信品質が低下する。
AGV・フォークリフトの移動
移動する機器が通信エリアをまたぐ際に、アクセスポイント間の切り替えに遅延が生じ、通信品質が低下するリスクがある。
増設・仮設エリアの通信未整備
繁忙期の一時的な増設エリアや屋外ヤードは、固定回線の敷設が難しく通信が不安定になりやすい。
冷凍冷蔵エリアの特殊環境
冷凍・冷蔵エリアでは通信機器の動作温度にも配慮が必要です。機器の選定時に動作保証温度を確認することが求められます。
拠点ごとに通信構成が異なる場合がある
複数拠点を持つ企業では、拠点ごとに通信構成や導入時期が異なるケースがあり、データ収集の方法や品質が統一されていない場合がある。

これらの課題を「とりあえずWi-Fiを増やせば解決する」と考えがちですが、用途や環境によっては、別の通信方式が適していることがあります。

通信方式は「用途」で選ぶ

倉庫内で発生するデータ通信のニーズは、用途によって必要な通信速度・通信距離・消費電力・接続端末数が異なります。一つの通信方式ですべてをカバーしようとすると、コストが過大になるか、品質が不十分になります。

主な用途 適した通信方式 特徴・理由
PLC・設備データ収集
WMS連携(有線)
Ethernet(有線LAN) 設備が固定されている場所や、安定性・セキュリティを重視する環境に向いている。無線と比べて通信品質が安定しており、PLCや固定WMSサーバーとの接続に広く使われる。
ハンディ端末・WMS連携 Wi-Fi 既設インフラを活用できる場合は低コスト。屋内の決まった作業エリアに向いている。
PLCデータ収集・設備モニタリング LTE / 4G 配線不要で既存設備に後付けしやすい。IoTゲートウェイと組み合わせてPLCデータをクラウドへ送れる。
温湿度・環境センサー
スマートメーター類
LPWA(LTE-M)省電力 低消費電力で長期バッテリー駆動が可能。少量データを広いエリアで安定的に送信できる。電源確保が難しいエリアのセンサーに最適。
AGV・AMR群制御
高精細カメラ・AI画像解析
プライベート5G高速・低遅延 高速・低遅延・多接続が必要な用途に。移動するAGVがエリアをまたいでも通信が切れにくい。大型施設向け。
屋外ヤード・敷地外との通信 セルラー(LTE/5G) 配線不要でエリアを問わない。屋外の資材置き場やトラックヤードなど、固定回線敷設が難しい場所に向いている。
山間部・港湾など通信困難な拠点 衛星通信 光回線や基地局の整備が難しい拠点への選択肢。近年はKDDIを含む通信事業者が法人向けサービスを提供している。

重要なのは「どの方式が最新か」ではなく「どの用途に何が適しているか」という視点です。既設のWi-Fiで対応できる用途にプライベート5Gを導入する必要はありませんし、AGV群制御にWi-Fiしか使えない環境では通信切断のリスクが残ります。

KDDIが取り組んできた製造業・物流業の事例

① 物流センターへの5G導入——倉庫現場の課題解決に向けた実証

📡 5Gを活用した物流高度化の実証(日立物流×KDDI)

KDDIは大手3PL事業者と、5Gを活用した物流センターの高度化に向けた実証実験を実施しました。物流センター内に5G環境を構築し、高精細カメラと作業員の動態把握・AI画像認識による検品作業の高速化・省人化などを検証した事例です。

この実証の背景として、物流業界担当者は「高解像度画像解析による検品の仕組みは、以前の技術環境では実現困難だったが、AIによる画像認識技術や5Gを活用すれば実現できる」と語っており、5Gという通信インフラが新たなデータ活用の可能性を開く事例となっています。

出典:KDDI株式会社「次世代通信で物流の課題解決に挑む——業界・社会全体への貢献を目指して」(biz.kddi.com)

② 工場IoT見える化——製造現場のデータ収集基盤

📡 工場IoT見える化ソリューション(KDDI)

KDDIは製造業向けに、工場設備のセンサーデータをネットワーク経由でクラウドに転送し、生産ラインの監視・データ分析・異常検知をリアルタイムで実現するソリューションを提供しています。化粧品・自動車部品・精密機械・化学・飲料製造など幅広い業種での実績があります。

このソリューションの核心は「データ収集から通信・蓄積・分析・見える化までをワンストップで提供する」という考え方です。現場スタッフが手作業で収集していた生産数・設備稼働状況・検査結果などを自動的に収集し、ダッシュボードに表示します。これは物流倉庫における工程別スループットやKPIの自動集計と同じ発想に基づいています。

出典:KDDI株式会社「工場IoT見える化ソリューション」(biz.kddi.com)

③ プライベート5G——工場・倉庫向け専用通信環境

📡 プライベート5G(KDDI)

KDDIは工場・倉庫など特定施設向けに、敷地内に5G環境を構築する「プライベート5G」を提供しています。KDDIが提供するプライベート5Gは、通信事業者が無線局の免許取得・構築・保守運用を担う法人向け5Gサービスです。導入企業は5G設備への自社投資や運用管理の負担なしに、AGV群制御・高精細カメラ・AI画像解析など高速・低遅延・多接続が必要な用途に5Gを活用できます。

出典:KDDI株式会社「プライベート5G」(biz.kddi.com)

④ LPWA——省電力センサーのデータ収集

📡 KDDI IoT通信サービス LPWA(LTE-M)

KDDIはLPWA(低消費電力・広域通信)規格を用いたIoT通信サービスを提供しています。2025年10月からはLTE-Mを追加し、省電力で長期バッテリー駆動が必要な環境センサーや、スマートメーターなどの用途に対応しています。

倉庫での活用としては、温湿度センサー・電力使用量モニタリング・扉や設備の開閉センサーなど、少量データを定期的に送信するセンサー用途に向いています。電源供給が難しい場所や、固定回線を引けない仮設エリアのセンサーにも利用できます。また、閉域網経由でAWSなどクラウドにセキュアに接続する構成も可能です。

出典:KDDI株式会社「KDDI IoT通信サービス LPWA」(biz.kddi.com)

閉域網という選択——セキュリティの視点

倉庫内のデータをインターネット経由で送ることへの懸念がある場合、外部インターネットを経由しない「閉域網(プライベートネットワーク)」という選択肢があります。

工場や物流施設では、設備の制御データや在庫・出荷情報が含まれるため、セキュリティの確保が重要です。閉域網を使うことで、不正アクセスのリスクを低減しつつ、セキュアな通信環境を構成できます。KDDIは閉域網サービス「KDDI Wide Area Virtual Switch」(KDDI WVS)を提供しており、IoT機器からクラウドまでセキュアに接続する構成を実現できます。

出典:KDDI株式会社「KDDI Wide Area Virtual Switch・KDDI Wide Area Virtual Switch 2」(biz.kddi.com)

通信インフラが整って初めて、データ活用が始まる

Nexa Warehouse-Optimizerは、WMSや設備から収集されたデータをもとにKPI可視化・予実管理・シフトシミュレーションを行う分析基盤です。その前段として、現場データがクラウドへ安定して届く通信インフラが整っていることが前提になります。

「倉庫データを見える化するには?」のコラムでは、見える化の前提として「①データがある」「②データを取り出せる」「③データを分析できる」という3つの条件を整理しました。この流れの中で通信インフラが担うのは、取り出したデータを分析基盤へ届ける経路としての役割です。データが整っていても届かなければ、分析は始まりません。

AIやデータ分析ツールだけでは物流DXは実現できません。まず必要なのは、現場データを安定してクラウドへ届けられる通信インフラです。通信環境が整って初めて、データ分析や現場改善は継続的に実施できるようになります。通信会社グループとして、KDDIが通信インフラを、Nexa Warehouse-Optimizerがデータ分析基盤を担うことで、物流現場のデータ活用を支えています。
「倉庫の通信環境からデータ活用まで相談したい」方へ

ネクサウェアはKDDIと椿本チエインの合弁会社です。通信インフラの整備からデータ分析基盤の導入まで、KDDIグループとして一体でご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。

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