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コラム | 物流を、数字で考える | 2026年10月23日

「今日は終わるのか」を、
朝の時点で判断できるか

物流を、数字で考える|その課題、どの数字を見れば判断できるのか

倉庫の通路で荷物を運ぶ作業者と、出荷の締め時刻を示す時計のイメージ

「15時を過ぎたあたりで、ようやく『今日は終わらない』と分かるんです。そこから応援を頼んでも、もう間に合わない。結局、残業で取り戻すしかない」

出荷の締めに間に合うかどうかは、現場管理者にとって毎日いちばん気になる問いです。ところが、その答えがはっきりするのは、たいてい夕方になってからです。進み具合を見て「どうもまずい」と感じ始め、気づいたときには打てる手がほとんど残っていない。

もし同じことが、朝の時点で分かっていたらどうでしょうか。

この記事で扱うこと
・「終わらない」と分かるのが、なぜいつも夕方になるのか
・朝の時点で、今日の見通しを立てるために見ておきたい5つの数字
・完了時刻の見込みは、1点で当てにいくものではなく、幅で持つもの
・朝に見通しが立つと、何が変わるのか

よくある打ち手:経験で見通す、精度の高い予測を求める

朝の時点で今日の見通しを立てる方法として、多くの現場で頼りにされているのは、経験のある管理者の感覚です。今日の物量と人員を見て、「今日は厳しそうだ」「今日はいける」と判断する。この感覚は、多くの場合かなり当たります。

一方で、感覚に頼る限界を感じている現場では、「精度の高い予測の仕組みが必要だ」という声も出てきます。過去のデータを学習して、完了時刻を正確に予測するシステムがあれば、朝から手が打てるはずだ、という考え方です。

どちらも、目指すところは正しいものです。ただ、どちらかに進む前に、確かめておきたいことがあります。

その打ち手が外れるとき

ある物流センターでは、締めに間に合わない日が月に何度もあり、完了時刻を予測する仕組みの導入が検討されていました。いまの管理者の見立てでは、朝の時点で「今日は危ない」と分かるのは、せいぜい半分程度の日だったからです。

検討の前に、朝の時点で手元にある数字を並べてみることにしました。始業時に確定していたオーダーの量。過去の同じ曜日に、朝の確定量が最終的な物量の何割だったか。物量や人員の条件が近い日の、人時あたりの処理量。どれも、WMSと勤怠の記録から出せる数字でした。

これらを使って、締め時刻から逆算してみると、遅れた日の多くは、朝の時点ですでに「このままでは間に合わない」計算になっていたのです。数字は揃っていました。ただ、誰もその数字を並べて、締めから逆算していなかったのです。

精度の高い予測システムが必要だと思っていた。
実は、朝の時点で必要な数字は揃っていて、誰も逆算していなかっただけだった。

予測の仕組みが不要だったわけではありません。ただ、高度な予測を入れる前に、手元の数字で朝の見通しを立てるところまでは、すでに手が届いていた可能性があります。その一歩があれば、より高い精度が必要なのはどこか、という次の問いも見えてきます。

では、何を見るか:朝の時点で見通しを立てる5つの数字

朝の時点で「今日は終わるのか」を見通すために、見ておきたい数字を5つ挙げます。出荷が終わらない原因は、人不足とは限らないは、終わらなかった後に原因を探る記事でした。それに対して、この記事では、始まる前に見通すための数字を扱います。

1 朝時点でのオーダー確定率

定義始業時に確定していた物量が、その日の最終物量に占める割合(過去の実績から算出する)
見方過去の実績を曜日ごとに並べ、朝の時点で何割が見えているかを確かめる
分かること朝の時点で、今日の物量をどこまで見積もれるか

朝に見えている物量が最終的な物量の9割なら、朝の見通しはかなり当てになります。5割しか見えていないなら、朝の時点の見通しは大きく外れる可能性があります。確定率が低い場合は、予測の精度を上げる前に、受注情報がいつ、どう届いているかを確かめるほうが先かもしれません。

2 過去実績から逆算した人時生産性

定義物量や曜日など、条件の近い日の処理量 ÷ 投入人時
見方過去の実績から、今日に近い条件の日を数日拾い、その平均と、日ごとの上下の幅を見る
分かること今日の人員で、何個処理できるかの基準値

「今日の人員で、どれだけ処理できるか」を、勘の代わりに数字で言うための基準値です。センター全体の平均ではなく、今日に近い条件の日を拾うのがポイントです。物量の多い日と少ない日では、同じ人員でも生産性は変わります。平均だけでなく、条件の近い日でもどれくらい上下するかを合わせて見ておくと、5つ目の数字にもつながります。

3 工程別の必要処理速度と実績処理速度

定義締め時刻から逆算した、工程ごとに必要な処理速度と、過去実績の処理速度
見方工程ごとに「必要な速度」と「出せる速度」を並べ、差の大きい工程を探す
分かることどの工程が、最初に間に合わなくなるか

センター全体で見て間に合いそうでも、ある工程だけが必要な速度に届かなければ、全体の完了時刻はその工程で決まります。朝の時点で、どの工程に余裕がなく、どの工程に余裕があるかが分かれば、応援をどこからどこへ回すかの見当を、作業が始まる前につけておけます。

4 予実の差が開く時刻

定義計画の進捗線と、実績の進捗線が離れ始める時刻
見方過去の遅れた日について、計画と実績の差がいつから開き始めたかを並べる
分かること「気づいた時には手遅れ」を避けるために、いつ確認すればよいか

締めに遅れた日を振り返ると、計画と実績の差は、夕方ではなく午前中に開き始めていることがよくあります。差が小さいうちは目立たず、午後になって大きくなってから初めて気づく。差が開き始める時刻が分かっていれば、その時刻に一度確認するだけで、手を打つタイミングを前に倒せます。朝の見通しは、この確認と組み合わせて初めて活きてきます。

5 変動要因の発生頻度

定義追加オーダー・欠員・設備停止などが起きた日の割合
見方過去数か月で、それぞれが起きた日が何日あったか、起きたときにどれくらい遅れたかを数える
分かること見通しに、どれくらいの幅を持たせるべきか

朝の見通しを1つの時刻で当てにいくと、変動要因が起きるたびに外れます。追加オーダーが週に2回は来る、月に数回は欠員が出る、ということが分かっていれば、それを前提にした幅を持てます。変動が起きることを想定していない見通しは、当たらないことのほうが多くなります。

完了時刻は、当てにいくものではなく、幅で持つもの

5つの数字を揃えたとき、出てくる見通しは「16時52分に終わる」という1つの時刻ではありません。

朝の見通しの持ち方
「今日は16時52分に終わる」
↓
「16時〜17時半。追加オーダーが来たら18時」
1点の予測は外れたときに使えなくなります。幅のある見通しは、外れ方まで含めて判断に使えます

「16時〜17時半、追加オーダーが来たら18時」。これが、朝の時点で実用的な見通しの形です。前半の「16時〜17時半」は、条件の近い日の生産性の上下から見た幅です。後半の「追加オーダーが来たら18時」は、それとは別に、変動要因が起きた場合のシナリオです。種類の違う不確かさを分けて持っておくと、何が起きたら見通しが動くのかが分かりやすくなります。幅の上の端が締め時刻を超えているなら、朝のうちに手を打つかどうかを考える。超えていなければ、予実の差が開きやすい時刻に一度確認する。それだけで、夕方に慌てる日は減らせる可能性があります。

そして、幅のある見通しには、もう一つの使い道があります。夕方に実際の完了時刻が出たとき、それが幅の中に収まったのか、外れたのかを確かめられることです。外れたなら、物量の見込みがずれたのか、生産性がずれたのか、想定していない変動が起きたのか。外れ方を見ることで、次の日の見通しの持ち方を直していけます。

朝の見通しが、すべてを決めるわけではない

ここで扱っているのは、センター全体をおおまかに見た見通しです。実際の完了時刻は、工程どうしの影響や、オーダーの届き方の偏りによって動きます。手元の数字で立てた見通しには限界があり、その限界がどこにあるかを知っておくことも、見通しを使ううえで欠かせません。

数字で試してみる

始業時刻と締め時刻、朝の時点の確定物量と確定率、今日の人員と、条件の近い日の人時生産性を入れると、完了時刻の見込みを幅で表示します。初期値は、標準的には締めに間に合うものの、生産性が低めに出ると遅れる状態にしてあります。幅の上の端は、締め時刻を超えているでしょうか。手元の数字に置き換えて確かめてみてください。

個
%
過去の同じ曜日で、朝の確定量が最終物量の何%だったか
人
個/人時
過去の実績から、物量や曜日が近い日の平均
±%
同じ条件の日でも、日によってどれくらい上下するか
分
完了時刻の見込み(幅)
―
 
見込みの幅 標準的な見込み 締め時刻
 
時刻と、0より大きい数字を入れてください。締め時刻は始業時刻より後にしてください。
計算の前提
今日の物量の見込み = 朝の時点の確定物量 ÷ オーダー確定率
作業にかかる時間 = 物量の見込み ÷(人員 × 人時生産性)+ 休憩などの時間
幅は、人時生産性がばらつきの範囲で上下した場合として計算(追加オーダーや欠員などの変動要因は含みません)
この計算で分かるのは、「朝の時点の、おおよその見通し」まで

センター全体を1つの工程として見た、割り算だけの見込みです。実際の完了時刻は、次のような理由で、この幅から外れることがあります。

  • 工程ごとに速さが違う全体の完了時刻は、最初に間に合わなくなる工程で決まります。工程ごとの見方は、出荷が終わらない原因の記事で扱っています。
  • オーダーの届き方に偏りがある確定率が同じでも、追加分が締め直前に集中すると、見込みより遅れます。
  • 想定していない変動が起きる欠員や設備の停止が起きた日は、幅の外に出ることがあります。どれくらいの頻度で起きるかを知っておくことが、幅の持ち方を決めます。

ここまで見て、打ち手を考えられる

「今日は終わるのか」が夕方にしか分からないのは、必ずしも予測の仕組みがないからではありません。朝の時点で手元にある数字を並べ、締め時刻から逆算していないだけ、ということもあります。

朝の時点で見通しが立てば、打ち手の選択肢が残っています。応援を頼む、作業の順番を入れ替える、締めの早い出荷を先に流す、残業の準備を早めにかける。夕方に分かっても、残る選択肢はほとんど残業だけです。どの手を選ぶかは現場によって違いますが、選べる手の数は、見通しが立つ時刻で大きく変わります。

「今日は終わるのか」を、夕方に知るのではなく、
朝の時点で、幅を持って見通す。

見通しが外れたら、その外れ方が、次の日の見通しを良くしていきます。

朝の見通しを、工程ごと・時間帯ごとに

この記事の計算は、センター全体を1つの工程として見た割り算です。工程ごとの処理速度や時間帯ごとの物量まで含めて、実績データから今日の見通しを立てることもできます。

「朝の時点で、今日の見通しを数字で説明したい」という段階が、ちょうど入口です。

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