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コラム | 物流を、数字で考える | 2026年10月15日

出荷が終わらない原因は、
人不足とは限らない

物流を、数字で考える|その課題、どの数字を見れば判断できるのか

夕方の出荷バースで、締め時刻に向けて積み込みを待つトラックと荷物

「今日も締めに間に合わなかった。ピッキングが遅いんですよ。あそこにもう少し人がいれば」

出荷が終わらない日が続くと、現場ではたいてい「どこが遅いのか」の見当がついています。目の前で作業が滞っている工程があり、その工程の前には処理を待つ荷物が並んでいる。人を足すなら、まずそこだと考えるのは自然なことです。

ただ、目の前で遅れて見える工程が、遅れの起点だとは限りません。

この記事で扱うこと
・人を足しても出荷の完了時刻が変わらないとき、何が起きているのか
・「終わらない」を分解するために見ておきたい4つの数字
・遅れの起点を、工程・時刻・滞留の3つの軸で捉える
・どこに手を打つかを考える前に、確かめておきたいこと

よくある打ち手:遅れている工程に人を足す

出荷が締め時刻に間に合わないとき、よく取られるのは、遅れている工程に人を回すことです。他の工程から応援を出す、派遣を追加する、残業で対応する。どれも現場ですぐに打てる手です。

実際に、ある工程の処理能力が明らかに足りず、そこで仕事が止まっているなら、その工程に人を足すのは正しい判断です。応援や増員で完了時刻が戻る日も、確かにあります。

ただ、人を足しても完了時刻がほとんど変わらない日が続くなら、一度立ち止まって確かめておきたいことがあります。

その打ち手が外れるとき

ある物流センターでは、出荷の締めに間に合わない日が週に何度もありました。現場の見立ては「ピッキングが遅い」。ピッキングエリアはいつも慌ただしく、完了したオーダーが次々と流れていく一方で、残りのリストはなかなか減りません。そこで、梱包から2名をピッキングの応援に回しました。

ところが、完了時刻はほとんど変わりませんでした。

そこで、午後のある時刻に、各工程の入口に積まれている量を数えてみました。ピッキングの後ろには荷物が溜まっていない。溜まっていたのは、検品の入口でした。ピッキングを終えた荷物が検品の前で待たされ、その分だけ梱包に流れてくる量が減っていたのです。梱包から応援を抜いた結果、梱包は手が空き、ピッキングはさらに多くの荷物を検品の前に積み上げていました。

ピッキングが遅いと思っていた。
実は、滞留が増えていたのは検品の入口だった。

ピッキングが慌ただしく見えたのは、処理すべき量が多いからで、処理が遅れていたからではありませんでした。「どこが忙しそうか」と「どこが全体の完了時刻を決めているか」は、必ずしも一致しません。そして後者は、現場を見て回るだけでは見えにくく、工程全体の流れを数字で追って初めて見えてきます。

では、何を見るか:「終わらない」を分解する4つの数字

「出荷が終わらない」という現象を分解するために、見ておきたい数字は4つです。1日の終わりの結果ではなく、1日の途中の状態を捉える数字であることが共通しています。

1 工程別の進捗率(時刻断面)

定義ある時刻の時点で、各工程が、その日の対象量の何%を通過したか
見方同じ時刻で工程ごとの通過率を並べ、前後の工程との差を見る
分かることどこで進捗が遅れているか。最終工程の遅れが、どこから来ているか

1日の終わりに「梱包が終わらなかった」と分かっても、それが梱包の問題なのか、梱包の前で止まっていたのかは分かりません。ある時刻で断面を切ると、工程ごとの進み具合が並びます。

14時時点(例) 通過率 前の工程との差
ピッキング70%―
検品45%25ポイント(ここで開いている)
梱包40%5ポイント

この例なら、梱包は前の工程に対してほとんど遅れていません。最終工程の遅れは、たいていその前の工程で起きています。差が大きく開いている場所が、まず疑うべき場所です。

2 工程間の滞留量

定義各工程の入口に積まれている、処理待ちの量
見方1日のうち何度か数え、増えているのか、減っているのか、横ばいなのかを見る
分かること処理能力が追いついていない工程

滞留は、ある時点の量よりも増え方に意味があります。一時的に溜まって、すぐ解消されるなら問題ありません。時間とともに増え続けている場所は、流れてくる量に対して、その工程の処理能力が追いついていない場所です。

進捗率が「どこで差が開いているか」を示すのに対して、滞留量は「その差がいま広がっているのか」を示します。WMSで工程ごとの完了登録が取れていれば、前工程の完了数と次工程の完了数の差として出せることもあります。取れていなければ、決まった時刻にかご車やコンテナの数を数えるだけでも、傾向は見えます。

3 オーダーの投入タイミング

定義何時に、どれだけのオーダーを現場に流したか
見方時間帯ごとの投入量を、工程の処理量と並べて見る
分かること遅れの原因が、現場の処理ではなく投入の仕方にあるケース

現場がどれだけ速く処理しても、オーダーが締め時刻の直前にまとめて流れてくれば、間に合わない日は出ます。反対に、午前中に一度に大量のオーダーを流すと、最初の工程にだけ仕事が集中し、後ろの工程は手待ちになります。

投入のタイミングは、受注の締め方や、オーダーをいつ、どの単位で現場に渡すかという運用で決まります。遅れが毎日同じ時間帯から始まっているなら、現場の処理より先に、投入のタイミングを確かめておく意味があります。

4 締め時刻から逆算した必要処理速度

定義その工程の残量 ÷ 締め時刻までの残り時間
見方工程ごとに、直近の実際の処理速度と並べて比べる
分かることいま、間に合うペースなのかどうか

1〜3は、主に「なぜ遅れたか」を捉える数字です。4つ目は、1日の途中で「このままで間に合うか」を捉える数字です。

残り4時間で2,000個を処理しなければならないなら、必要な速度は1時間あたり500個です。直近1時間の実績が450個なら、このままでは間に合いません。計算は割り算だけですが、終わってから「終わらなかった」と分かるのと、途中で「このままでは終わらない」と分かるのとでは、打てる手の数がまったく違います。

3つの軸で「終わらない」を捉える

4つの数字を重ねると、「出荷が終わらない」という現象を、工程・時刻・滞留という3つの軸から捉えられるようになります。

「終わらない」を分ける3つの軸
工程 どの工程で、前の工程との差が開いているか 工程別の進捗率と滞留量で見る
時刻 何時ごろから、間に合わないペースになっているか 必要処理速度と実際の速度が離れ始める時刻を見る
滞留 どこに、仕事が溜まり続けているか 滞留量の増え方と、オーダーの投入タイミングを重ねて見る

そのうえで、押さえておきたい見方が一つあります。滞留が増え続けている工程が1つあれば、他の工程に人を足しても、全体の完了時刻は変わりにくいということです。

冒頭の例で、ピッキングに応援を足しても完了時刻が動かなかったのは、このためでした。検品の処理速度が変わらない限り、ピッキングが速くなっても、検品の前に積まれる量が増えるだけです。工程間の流れが安定している場合、全体の完了時刻は、いちばん詰まっている工程の処理能力に大きく左右されます。

データがなくても、始められる

工程ごとの完了時刻がWMSに残っていない現場もあります。その場合でも、毎日同じ時刻に、各工程の入口にあるかご車の数を数えて記録するだけで、滞留の傾向はかなり見えます。数日分を並べると、どこで溜まり続けているのかを考える手がかりになります。

ここまで見て、打ち手を考えられる

「出荷が終わらない」は、現象です。その原因は、人の数かもしれませんし、ある工程の処理能力かもしれませんし、オーダーを流すタイミングかもしれません。

どこに手を打つべきかは現場によって違います。ただ、「終わらない」を工程・時刻・滞留の3つの軸に分けて初めて、どこに手を打つかの議論ができるようになります。分けないままでは、議論はいつも「どこが忙しそうか」の印象から始まります。

「どこが遅いのか」を問う前に、
「どこで差が開き、どこに溜まり続けているのか」を数字で確かめる。

いちばん忙しく見える工程が、いちばん詰まっている工程とは限りません。

数字で試してみる

いまの時刻と締め時刻、工程ごとの残量と直近の処理速度を入れると、工程ごとの必要速度と、このペースが続いた場合の完了見込みが出ます。

最終工程の遅れが、どの工程から始まっているのか。初期値は冒頭の例に近い状態にしてあります。手元の数字に置き換えて、遅れの起点がどこに出るかを確かめてみてください。

トラックへの積込開始など、最終工程を終えるべき時刻
工程ごとの残量と、直近の処理速度
工程 残量(個) 直近の速度(個/時) 必要速度 見込み完了
ピッキング――
検品――
梱包――
残量=その工程をまだ通過していない量。後の工程ほど、前の工程にまだ残っている分も含めて「これから処理する量」になるため、大きくなる場合があります。
 
時刻と、0以上の残量・0より大きい速度を入れてください。締め時刻は、いまの時刻より後にしてください。
計算の前提
必要速度 = 残量 ÷ 締め時刻までの残り時間
見込み完了 = いまの時刻 + 残量 ÷ 直近の処理速度
※後の工程は、前の工程から仕事が供給されることを前提に、前の工程より先には完了しないものとして計算
この計算で分かるのは、「どの工程が先に間に合わなくなりそうか」まで

直近の速度が、この先も同じように続くと仮定しています。実際の現場では、次のような理由で見込みは動きます。

  • 前の工程が詰まると、後の工程は速度を出せない検品が止まれば、梱包の速度が高くても仕事が流れてきません。
  • オーダーの追加や投入の偏りがある残量そのものが、午後に増えることがあります。
  • 人を動かすと、動かした先と元の両方の速度が変わる応援を出した工程の速度は下がります。