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コラム | 物流を、数字で考える | 2026年10月20日

自動倉庫を検討する前に
確認したい5つの数字

物流を、数字で考える|その課題、どの数字を見れば判断できるのか

高層ラックに並ぶコンテナを、スタッカークレーンが入出庫する自動倉庫

「棚がもう一杯で、置き場所がない。床にまで仮置きしている。いっそ自動倉庫を入れて、高さを使えば解決するんじゃないか」

保管スペースが足りなくなると、倉庫の中は目に見えて窮屈になります。通路に荷物があふれ、探す時間が増え、作業の動線も乱れる。人手不足も重なって、「保管と省人化を一度に解決できる」自動倉庫に目が向くのは自然なことです。

ただ、自動倉庫は大きな投資であり、一度入れると簡単には動かせない設備です。検討の場に入る前に、確かめておきたい数字があります。

この記事で扱うこと
・自動倉庫を入れたのに、想定した効果に届かないとき、何が起きているのか
・検討に入る前に、いまの倉庫で測っておきたい5つの数字
・導入前に測っていない数字は、導入後に効果を証明できない、ということ
・設備を選ぶ前に、確かめておきたいこと

よくある打ち手:自動倉庫で保管と省人化を一度に解決する

保管能力の不足と人手不足が同時に起きているとき、自動倉庫は魅力的な選択肢です。同じ床面積でも高さ方向を使って保管量を増やせる。入出庫を設備が担うので、棚の間を歩き回る作業が減る。在庫の位置もシステムで管理され、探す手間もなくなる。

実際に、物量が安定して伸びていて、出庫頻度の高い商品が多く、保管スペースが物理的に限界に来ているなら、自動倉庫は大きな効果を生む投資になります。

ただ、自動倉庫は、選定から稼働まで時間がかかり、入れた後に規模や仕様を変えるのが難しい設備です。だからこそ、検討の前提になる数字を、検討に入る前に揃えておきたいのです。

その打ち手が外れるとき

ある物流センターでは、保管スペースの不足を理由に自動倉庫の導入が検討されていました。棚はほぼ埋まり、新しい商品を置く場所を探すのに毎日苦労している。現場の実感は「とにかく保管能力が足りない」でした。

そこで、検討の前提を揃えるために、SKUごとの出庫頻度を調べてみました。すると、直近3か月でほとんど出庫のないSKUが、保管スペースの半分以上を使っていたのです。毎日のように動く商品は、全体のSKUの一部に集中していました。

保管能力が足りないと思っていた。
実は、出庫頻度の低いSKUが保管スペースの大半を占めていた。

この状態のまま自動倉庫を入れると、設備の保管容量の多くが「ほとんど動かない在庫」に使われることになります。容量は増えても、入出庫能力を十分に活かせず、省人化の効果も想定に届きにくい可能性があります。「保管能力が足りない」と「保管スペースを何が使っているか」は、別の問いです。

これは、自動倉庫が不要だったという話ではありません。動かない在庫の扱いを先に整理すれば、自動倉庫に求める容量も、入れるべき商品も変わってくる、ということです。

では、何を見るか:検討の前に確認したい5つの数字

自動倉庫の検討に入る前に、いまの倉庫で確認しておきたい数字を5つ挙げます。設備を選ぶための数字ではなく、設備に何を求めるのかを決めるための数字です。

1 入出荷量の推移

定義月次・日次の入荷量と出荷量の推移。少なくとも1年分
見方伸びているのか、横ばいなのか、季節で上下しているのかを、月次と日次の両方で見る
分かること設備の容量を、どの物量を前提に考えるか

自動倉庫は、長く使う前提で容量を決める設備です。物量の見通しを高く置きすぎると、稼働率の低い設備を抱えることになります。低く置きすぎると、数年で容量が足りなくなります。過去の推移が手元にないまま「今後も伸びるはず」で容量を決めると、前提そのものが検証できません。

2 SKU数と出庫頻度

定義SKUの数と、SKUごとの出庫頻度の分布
見方出庫頻度の高い順にSKUを並べ、上位何%のSKUで出庫の大半を占めているかを見る
分かること自動倉庫に入れるべき商品と、入れても能力が活きにくい商品

多くの倉庫では、出庫の大部分が一部のSKUに集中しています。一方で、ほとんど動かないSKUが、保管スペースの相当部分を使っていることがあります。動かない在庫を多く自動倉庫に入れると、保管容量を使う一方で、入出庫能力を活かす機会は少なくなります。どのSKUを設備に入れ、どのSKUを別の場所で持つのか。その線を引く材料が、この分布です。

3 ピーク波動

定義日別・時間帯別の入出庫量の、最大と平均の比
見方年間で最も忙しい日、1日で最も忙しい時間帯の入出庫量を、平均と並べる
分かること設備の入出庫能力を、どの水準に合わせるか

自動倉庫には、保管の容量とは別に、1時間あたりに何回入出庫できるかという能力があります。ピークに合わせれば通常時は能力が余り、平均に合わせればピーク時に出庫待ちが生まれます。AGVを入れるか、人を増やすかでも触れたように、能力をどこに合わせるかは、波の大きさを知らなければ決められません。

4 現在の保管効率

定義実際に保管している量 ÷ 保管できる量
見方ロケーション単位、または容積単位で、どれだけ埋まっているかと、何が埋めているかを見る
分かること設備の前に、置き方の問題が残っていないか

「棚が一杯」に見えても、区画の中に空間が残っていたり、小さな商品が大きな区画を使っていたりすることがあります。保管効率は、設備の不足と置き方の問題を切り分けるための数字です。置き方に余地が残っているなら、自動倉庫の前に、あるいは自動倉庫と合わせて、ロケーションの見直しを検討する意味があります。

5 現在の人時生産性

定義保管・入出庫の作業にかかっている人時と、その処理量
見方入庫・格納・ピッキング・補充などの作業ごとに、処理量 ÷ 人時を、物量の条件と合わせて記録する
分かること導入後に、効果を検証するための基準値

5つの中でも、特に見落とされやすいのがこの数字です。

自動倉庫を入れたあと、「どれだけ省人化できたか」を問われる場面は必ず来ます。そのとき比べる相手になるのが、導入前の人時生産性です。ところが、導入前は設備の選定や工事の準備に追われ、いまの作業にどれだけ人時がかかっているかを、条件を揃えて記録していないことが少なくありません。

導入前に測っていない数字は、
導入後に効果を証明できない。

導入後に「人が減った気がする」「楽になった」という声は出ても、それを数字で示せなければ、投資が見合ったのかは誰にも説明できません。さらに、物量が増えた年に導入していれば、人が減らなかったことが「効果がなかった」のか「物量増を吸収した」のかも区別できなくなります。基準値は、導入後に作ることはできません。

測っておきたい記録を、検討の前に揃える

5つ目の数字を「あとで比べられる」形で残すには、人時と処理量に加えて、そのときの条件を一緒に記録しておく必要があります。

記録すること 何のために使うか 最小の始め方
作業ごとの人時省人化の効果を比べる分母入庫・格納・ピッキング・補充を分けて、1日単位で記録する
作業ごとの処理量人時あたりの処理量を出すWMSの実績から、同じ区分で集計する
物量の条件導入前後で、条件の近い日どうしを比べる出荷件数・行数・ピース数を、日ごとに残す
記録した期間季節の影響を見分ける繁忙期と通常期の両方を含むようにする

完璧な記録でなくても構いません。大事なのは、導入後と同じ区分、同じ単位で比べられることです。導入後に記録の取り方が変わってしまうと、数字があっても比べられません。

数字で試してみる

保管できるロケーション数と、いま使っている数、そのうち出庫頻度の低いSKUが使っている数を入れると、保管スペースが何に使われているかが分かります。初期値は冒頭の例に近い状態にしてあります。「足りない」のは保管の容量なのか、それとも置き方なのか。手元の数字に置き換えて確かめてみてください。

ロケ
棚・パレット置き場など、保管に使える区画の総数
ロケ
何かしらの在庫が置かれている区画の数
ロケ
例:直近3か月で出庫が数回以下のSKUが置かれている区画
日
結果の文面に使うだけで、計算には影響しません
保管スペースの使われ方(保管できる区画全体に対する割合)
低頻度SKU ― よく動くSKU ― 空き ―
 
0以上の数字を入れてください。使っているロケーション数は保管できる数以下に、低頻度SKUのロケーション数は使っている数以下にしてください。
計算の前提
保管効率 = いま使っているロケーション数 ÷ 保管できるロケーション数
低頻度SKUの占有率 = 低頻度SKUが使っているロケーション数 ÷ いま使っているロケーション数
この計算で分かるのは、「保管スペースを何が使っているか」まで

この数字だけで自動倉庫の必要容量を決めるものではありません。ロケーションの数だけで見ているので、区画の大きさや、商品の重さ・形の違いは反映していません。実際に検討するときは、次の点も合わせて確かめたいところです。

  • 低頻度SKUの中身季節品や、取引条件で持たざるを得ない在庫など、動かなくても置いておく理由があるものも含まれます。
  • 区画の大きさの違い大きな区画を少数のSKUが使っている場合、数の比率と面積の比率は一致しません。
  • 保管と出庫の両方の能力保管スペースが足りても、出庫の速さが足りなければ、自動倉庫の検討の前提は変わります。

ここまで見て、打ち手を考えられる

自動倉庫を入れるべきかどうかは、現場によって違います。ただ、設備の選定より前に、いま何が起きているかを数字で言えるかどうかで、検討の質は大きく変わります。

物量はどう推移しているのか。どのSKUがどれだけ動き、どれだけ場所を使っているのか。波はどれくらいあるのか。置き方に余地は残っていないか。そして、いまの作業にどれだけ人時がかかっているのか。この5つが揃っていれば、自動倉庫に何を求めるのかが定まり、導入後にその効果を確かめることもできます。

「どの自動倉庫を選ぶか」を問う前に、
「いまの倉庫で何が起きているか」を数字で言えるようにしておく。

導入前に測っておいた数字だけが、導入後に、その投資が見合ったかを語ってくれます。

設備投資の前に、いまの基準値を揃える

NW-Optimizerは、WMSの実績や作業の記録をもとに、作業ごとの人時や生産性、時間帯ごとの物量を、条件を揃えて残せるようにする仕組みです。自動倉庫などの設備投資を検討する前の、いまの数字の整理からご一緒できます。

「設備は検討しているが、いまの数字を説明できない」という段階が、ちょうど入口です。

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