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コラム | 物流データ活用 第3回 | 2026年9月16日

平均値だけでは、現場の実態は見えない
—切り口を変えると数字の意味が変わる

切り口を変えて実態を読む

前回は、KPIを一つの数字ではなく式として見て、分子と分母に割るところまでを扱いました。今回はその続きです。割った数字を、どの切り口で分けて見るか。

まず、こんな二つの現場を並べてみます。どちらも一日の平均生産性は100個・人時、処理量も投入人時も同じです。

現場A
平均 100個・人時
午前103
昼過ぎ98
夕方99
一日を通して安定している。改善するなら、全体の底上げを考える現場。
現場B
平均 100個・人時
午前120
昼過ぎ100
夕方80
午後に向かって落ちている。夕方の時間帯に、確認すべき何かがある現場。

KPIの一覧表では、この2つはまったく同じ行として並びます。「平均100個・人時」。しかし現場でやるべきことは違います。平均が同じでも、中身が同じとは限らない——今回のテーマはこの一点です。

この回で扱うこと
・平均値は何のために有効で、どこから足りなくなるのか
・「まず割ってみる」——切り口を当てる順番
・工程別・時間帯別・商品別・作業者別で、それぞれ何が見えるのか
・切り口を変えても何も出ないときに、何を疑うか

平均は、出発点としては正しい

先に立場をはっきりさせておきます。平均値を使うな、という話ではありません。

平均は、現場全体の水準を一つの数字で掴むための、もっとも扱いやすい指標です。前月と比べる、拠点間で比べる、目標と比べる——こうした比較の土台として平均は有効ですし、これを捨てると会話の共通言語がなくなります。

問題は、平均が間違っていることではなく、平均で止まることです。平均は「この現場はだいたいこのくらい」を教えてくれますが、「どこを直せばいいか」は教えてくれません。前回KPIを分子と分母に割ったのと同じ発想で、今度は数字を集団として割っていくことになります。

平均は、現場の水準を知るための数字。
実態を知りたいなら、そこから一段割る。

まず割ってみる——切り口を当てる順番

切り口は無数にありますが、闇雲に組み合わせても時間を使うだけです。実務では、粗い切り口から順に当て、差が大きく出たところをさらに深く掘る——この進め方がいちばん早いと思います。

全体 → 工程 → 時間帯 → 商品 → 作業者
STEP 0 全体 現場全体の水準はどのくらいか。前月・前年・他拠点と比べてどうか
STEP 1 工程別 入荷・格納・ピッキング・検品・梱包・出荷。全体を引き下げている工程はどこか
STEP 2 時間帯別 その工程は一日のどこで落ちているか。立ち上がり、昼前後、締め前
STEP 3 商品・オーダー特性別 扱っているモノの違いで説明できるか。バラとケース、大型と小物、単品と複数行
STEP 4 作業者・チーム別 人による差はどのくらいか。習熟の差か、割り当てられた仕事の差か

この順番には理由があります。工程は物理的に分かれているため差が解釈しやすく、時間帯はシフトや締め時刻と直接つながるため次の行動に結びつきやすい。一方、作業者別を最初に見ると、差が習熟によるものなのか、たまたま難しい仕事が割り当てられていたのかを判別できず、人の評価の話になってしまいがちです。作業者別は、他の切り口で説明できない差が残ったときに使う——この順序を守ると、分析が個人の話に流れにくくなります。

切り口ごとに、見えるものは違う

切り口 見えること 次に確認すること
工程別 どの工程で人時を多く使っているか。工程間の能力差 その工程の作業手順・レイアウト・設備の状態
時間帯別 一日の中の落ち込み。立ち上がりの遅さ、締め前の混雑 シフトの区切り、休憩の入り方、物量の到着タイミング
商品・オーダー別 作業難易度の差。特定の商品群だけ極端に時間がかかる ロケーション配置、荷姿、ピッキング単位
作業者・チーム別 人による差の大きさ。ばらつきの幅 教育で埋まる差か、配置や割り当ての差か
日別・曜日別 波の形。特定の曜日だけ落ちる、月末だけ落ちる 物量の波、要員計画、締めのルール

「ばらつき」も一つの切り口になる

もう一つ、見落とされやすい見方があります。日ごとの振れ幅です。

平均100個・人時が、毎日95〜105で推移している現場と、70〜130を行き来している現場では、管理の難しさがまったく違います。後者は、要員を平均に合わせて組むと、悪い日には間に合わず、良い日には人が余ります。平均が同じでも、振れ幅が大きい現場のほうが、計画が立てにくいということです。

最大値と最小値を並べるだけでも、振れ幅の大きさは十分に把握できます。統計的な指標を持ち出す前に、「良かった日と悪かった日は、どれだけ離れているか」を見る。そこに大きな差があるなら、次に見るのは良い日と悪い日で何が違ったか——これは第4回のテーマです。

切り口を変えるには、データがその粒度で残っている必要がある

時間帯別に見たければ、作業実績に時刻が付いていなければなりません。工程別に見たければ、どの作業がどの工程のものかが判別できなければなりません。切り口を当てようとして「その粒度では残っていない」と気づくのは、前回も触れたとおり収集設計への宿題です。分析の失敗ではありません。

切り口を当てても、何も出ないことがある

実務では、いくつか割ってみても差が出ないことがあります。そのときに考えられるのは、だいたい次の3つです。

1. 本当に差がない——全体が均等に落ちている場合です。この場合は個別の工程ではなく、物量、シフト全体、あるいは前提条件そのものを疑うことになります。

2. 切り口が粗すぎる——「午前・午後」では見えなくても、1時間単位にすると立ち上がりの1時間だけ極端に低い、ということがあります。

3. 複数の切り口が打ち消し合っている——時間帯別では平らに見えても、実は「午前は難しい商品、午後は簡単な商品」で相殺されている場合です。この場合は切り口を掛け合わせます(時間帯 × 商品特性)。一つの切り口では見えなかった差が、組み合わせた瞬間に現れることがあります。

ただし、掛け合わせは慎重に。切り口を2つ、3つと重ねるほど、一つのマス目に入るデータは少なくなります。数件の実績から出た数字は、たまたまの結果かもしれません。細かく割るほど、その数字の後ろにいくつの実績があるかを見る——分析を細かくしていくときの、実務的な歯止めです。

まとめ——数字は、切り口を変えることで意味が変わる

冒頭の現場AとBは、平均では同じ現場でした。時間帯で割った瞬間に、別の現場になりました。数字そのものが変わったわけではありません。見る単位を変えただけです。

物流データ分析でまずやるべきことは、手法を選ぶことではなく、この「割ってみる」を習慣にすることだと思います。工程で割る、時間帯で割る、商品で割る。差が出た切り口が、次に見るべき場所を教えてくれます。

平均は現場の水準を教えてくれる。
実態を教えてくれるのは、差が出た切り口のほうです。
次回:「何が起きたか」から「なぜ起きたか」へ——異常を見つけるだけでは改善にならない

切り口を変えて、夕方の梱包工程が落ちていると分かった。ここまでが「何が起きたか」です。

では、なぜ落ちたのか。いつからそうなのか、通常の日と何が違ったのか、そもそも異常なのは現場なのかデータなのか。次回は、見つけた差を原因の手前まで持っていく手順を扱います。
「どの切り口で見られるか」の棚卸しからご相談いただけます

工程別・時間帯別・商品別に生産性を分けて見られる状態か、日ごとの振れ幅を追えるか——既存のWMSや設備のデータで、どこまで割って見られるのかを整理するところから支援します。

「平均は出せるが、その先が見えない」という段階からでもご相談いただけます。

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