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コラム | 2026年7月31日

フィジカルインターネットとは?
—時代に求められる倉庫データと処理能力の可視化

フィジカルインターネットのイメージ図
この記事でわかること
・フィジカルインターネット(PI)とは何か、なぜ今注目されているのか
・PIが機能するための前提として、倉庫に何が求められるのか
・KDDIの物流DXへの取り組み
・倉庫データの可視化が、物流ネットワーク全体の最適化に繋がる理由

「物流2024年問題」への対応として、共同配送や標準化といった企業間連携の動きが広がっています。その延長線上にある概念として、近年「フィジカルインターネット(PI)」が物流業界で注目を集めています。

とはいえ、「PIは大手物流会社や行政の話であって、自社の倉庫には関係ない」と感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、PIとは何か、そしてそれが倉庫運営にどう関わってくるのかを整理します。

フィジカルインターネットとは

フィジカルインターネットとは、インターネットが情報を最適経路でルーティングするように、物流においても荷物・倉庫・車両の空き情報をデジタル技術で可視化し、業種を超えた複数企業の倉庫やトラックを相互接続したネットワークで、最適な輸送ルートを導き出す仕組みです。

経済産業省は2022年にフィジカルインターネット実現ロードマップを策定しており、2040年を目標に国を挙げた取り組みが進んでいます。物流の担い手不足・輸送効率の低下・温室効果ガス排出削減といった課題の解決策として、業界横断での標準化と共同化が求められています。

インターネットとの対比で考える
インターネットでは、共通のルールによって情報が最適な経路で届けられます。フィジカルインターネットはこの考え方を物流に応用し、荷物を「パケット」のように扱い、空いている倉庫やトラックを経由して効率的に目的地へ届けることを目指します。そのためには、各拠点の空き状況や受け入れ能力がデータとして共有されている必要があると考えられます。

KDDIが物流DXに取り組む理由

フィジカルインターネットでは、「輸送」と「倉庫」の双方をデータでつなぐことが求められます。KDDIグループでは、この考え方を踏まえ、通信・物流・倉庫自動化を組み合わせた取り組みを進めています。

KDDIの物流分野での取り組みには、フィジカルインターネットの導入に向けた実証や、倉庫自動化を担う「Nexa Ware」の設立が含まれています。輸送側・倉庫内側のそれぞれから物流DXの課題に向き合っています。

KDDIの公表情報より
2024年5月、KDDIは伊藤忠商事・豊田自動織機・三井不動産・三菱地所とともに、フィジカルインターネットの事業化に関する覚書を締結しました。KDDIが担う役割として、「フィジカルインターネットのサービス監視、通信環境整備、貨物のモニタリング」が明示されています。通信事業者としての知見を物流の社会課題解決に活かす取り組みとして位置づけられています。
出典:KDDIニュースルーム(2024年5月17日)

一方、倉庫内のデータ分析を担うのがNexa Wareです。KDDIと椿本チエインが共同で設立したNexa Wareは、「Nexa Warehouse-Optimizer」を通じて倉庫内の作業データを収集・分析し、KPI可視化・シフトシミュレーション・出荷完了予測を提供しています。PIが目指す「拠点のデータ化」という方向性と、倉庫内の可視化は同じ問題意識から来ています。

倉庫データがなければ、判断できない

「あの倉庫に荷物を回す」という判断は、その倉庫が今日あと何件処理できるか、出荷作業は何時に終わるか、という情報がなければ成立しません。共同配送・物流アセットのシェアリングも、受け入れ可能な能力がデータとして見えていなければ判断できません。

PIを実現するためには、荷物の情報だけでなく、倉庫の処理能力もデータとして把握・共有できることが重要になると考えられます。

現在の多くの倉庫
「A倉庫へ回そう」
↓
処理能力が見えない
出荷完了時刻も不明
↓
判断できない
→
データ可視化後
「A倉庫へ回そう」
↓
処理能力:残200件
完了予測:17:30
↓
最適配送の判断ができる

「データ連携」という言葉が先行しがちですが、その前提となるのは「各拠点がデータを継続的に取得・活用できる状態」にあることです。データを継続的に取得・活用できない倉庫では、ネットワークとの効率的な連携が難しくなります。物流の標準化が進むほど、この差は大きくなっていくでしょう。

今から始められること

PIの実現は2040年が目標とされており、企業間の標準化・制度整備はこれからです。しかし、自社倉庫のデータ可視化は今日から取り組めます。

人時生産性・工程別リードタイム・出荷完了予測——これらを日次で把握している倉庫と、把握していない倉庫では、将来的なネットワーク参加の準備に差が生まれます。物流の標準化が進むほど、データを出せる倉庫とそうでない倉庫の差は大きくなるでしょう。

フィジカルインターネットでは、倉庫は荷物を保管する場所ではなく、処理能力をデータとして提供する「ネットワークのノード」へと役割が変わっていきます。その変化は輸送ネットワークの整備と同時に、各拠点の倉庫がデータを出せる状態になることで初めて機能します。大きな変化が動き始める前に、自社倉庫のデータ整備を進めておくことが、将来への備えになります。
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