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コラム | 2026年7月27日

物流コスト削減は、どこから手をつけるか
―運賃交渉の前に見直したい倉庫の人件費

物流コストの内訳と倉庫人件費
この記事でわかること
・物流コストの内訳——輸送費55%と並んで「残り45%」も見直すべき理由
・倉庫の人件費が、構造的に見直されにくい3つの理由
・WMSだけでは改善サイクルまで回しにくい理由
・データから現場の改善行動につなげるとはどういうことか

物流コストを削減しようとすると、多くの企業がまず運送会社との交渉に向かいます。たしかに輸送費は物流コスト全体の55.2%を占める最大項目です(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会、2023年度調査)。目に見えて大きいから、手をつけやすい。

輸送費の見直しは当然重要です。ただ、裏を返せば残り44.8%は、十分に検討されないまま残り続けていることが多いのが実態です。

物流コストの内訳(JILS 2023年度調査)
55.2% 輸送費——請求書で毎月見えるため、削減の対象として認識されやすい
29.1% 荷役・包装・管理費等——この中に倉庫運営に関わる人件費が含まれる
15.7% 保管費
輸送費以外の44.8%が、比較の対象になりにくい領域です。

なぜ倉庫コストの改善は進みにくいのか

倉庫の人件費が見直されにくいのは、担当者の関心が低いからではありません。構造的に「見えにくい」設計になっているためです。

輸送費は「請求書」で見えるが、倉庫人件費は「予算」に埋もれる

輸送費は配送のたびに運送会社から請求書が届きます。委託費として運送会社ごとに明確に計上されるため、「先月より高い」「他社に切り替えよう」という比較と意思決定が生まれやすい。

JILSの調査では、物流コストが調達・生産・販売など複数部門にまたがって発生するため、会社全体での把握が難しく、コスト削減の優先対象として認識されにくいことが継続的な課題として指摘されています。倉庫の作業人件費も、この構造の中に埋もれやすいコストの一つです。出荷1件あたりのコストとして可視化されるわけでもないため、「高いかどうか」の判断基準がそもそも存在しないのです。

指標を計測していても、改善に活かせていない

コストが見えないだけでなく、改善の余地があるかどうかもわからない状態が続いています。倉庫の作業効率を測る基本指標は人時生産性ですが、国土交通省の「物流事業者におけるKPI導入の手引き」(2015年)では、KPI管理に必要な情報収集には「それなりの時間・労力が必要」と明示されており、管理の定着が容易でないことが指摘されています。計測はしていても、分析・改善のサイクルまで確立するには継続的な仕組みが必要です。

さらに注意が必要なのは、「人時生産性を管理している」と思っていても、計算単位が業務の実態と合っていないケースがある点です。工程をまたいだ集計になっていてボトルネックが特定できない、ピッキングと梱包をまとめて1つの指標で管理していて工程ごとの傾向が見えない——といった状態では、数値はあっても改善の根拠になりません。KPIの形式が整っているかどうかより、その数値が実際の意思決定に使えるかどうかが問われます。

倉庫コストの改善が進みにくい3つの理由
① 輸送費は委託費として毎月明確に計上される一方、倉庫人件費は労務費として他部門予算に含まれるケースが多く、比較・改善の対象として認識されにくい
② 人時生産性というKPIを計測していても、工程別・時間帯別に分析できていなかったり、改善行動につながっていなかったりするため、改善余地がどこにあるかわからない
③ KPIを設定していても計算単位が業務実態と乖離しており、数値が意思決定に使えない状態になっている

倉庫コストを測る基本指標

倉庫の作業効率を測る基本指標が人時生産性です。処理数量を投入人時で割った値で、1人が1時間あたりにどれだけ処理したかを示します。

この数値が重要なのは、改善が直接コストと処理能力に直結するからです。人時生産性が向上すれば、同じ出荷量をより少ない投入人時で処理できる可能性が生まれます。波動や最低配置人数などの制約はあるものの、過剰なシフト投入の削減や、同じ人員でより多くの出荷をこなす余力の創出につながります。

逆に言えば、この数値を把握していなければ、残業代が増えていても「繁忙期だから仕方ない」で片付けてしまい、構造的な非効率が隠れ続けることになります。

WMSだけでは改善サイクルまで回しにくい理由

「倉庫にはWMSがある。データはあるはずだ」——そう思う担当者は多くいます。しかし多くのWMSでは作業実績データを取得できますが、人時生産性を継続的に分析し、改善サイクルまで一貫して支援することを主目的として設計されているわけではありません。

WMSの設計目的は「作業指示の管理」

一般的なWMSの基本機能は「在庫管理」「入荷管理」「出荷管理」です。これを一言で表せば、「何を・どこで・いつ処理するか」を管理するシステムです。

入荷した商品をどのロケーションに格納するか、どのピッキングリストをどの作業者に渡すか、出荷伝票と実際の商品が合っているか——これらを正確にコントロールし、誤配や欠品を防ぐことがWMSの設計目的です。人的ミスの防止と作業の標準化・平準化はWMSの主要な役割です。一方で、生産性分析機能を備える製品もありますが、人時生産性の継続管理や改善サイクルの運用までを主目的としているケースは限定的です。

システム 管理の対象 人時生産性の継続管理
WMS 何を・どこで・いつ処理するか(作業指示・在庫・入出荷) 主目的外。作業完了記録はあるが、KPIとして整形・継続管理する機能は限定的
Nexa Warehouse-Optimizer どれだけ効率よく処理できているか(KPI・生産性・シフト) 主目的。時間帯別・工程別の人時生産性を集計・予実管理・改善サイクルまでカバー

近年はダッシュボード機能を持つWMSや、分析モジュールを別途提供する製品も存在します。ただし、投入人時と実績処理数を組み合わせ、時間帯別・工程別に人時生産性を継続的に集計し、シフト計画の最適化まで一貫してカバーするWMSは限定的です。多くの倉庫では、「作業の正確性を担保するシステム」は整っていても、「生産性をKPIとして継続管理する仕組み」は別途必要になります。

データは倉庫の中にあっても、
意思決定に使える形に整形されていない。
これが「倉庫コストの改善ポイントが見えない」本質的な理由です。

データが現場の意思決定につながるとき

人時生産性が「低い」という事実がわかるだけでは、改善は始まりません。重要なのは、「どの工程で」「どの時間帯に」「どの条件下で」生産性が落ちているかを把握し、具体的な対応につなげることです。

分かること 打てる手
ピッキング工程だけ午前の人時生産性が低い 応援配置の判断ができる
繁忙日の前日に生産性の落ち込みが起きやすい 前倒しで補充作業を組める
特定の出荷条件下でのみ処理効率が下がる ロケーション変更・作業手順の見直し
午前だけ特定工程の生産性が低い シフト構成・開始時間の調整

数値があって初めて、経験と勘による判断をデータで裏付けられます。

Nexa Warehouse-Optimizerが担う役割

データを改善行動につなげるには、3つの分析サイクルが必要になります。

改善に必要な3つのサイクル
① 継続的なKPI可視化——時間帯別・工程別に人時生産性を集計し、どこで・いつ・どの程度落ちているかをリアルタイムで把握する
② 計画との差の把握——目標値に対して実績がどう乖離しているかを継続的に追跡し、「繁忙期だから仕方ない」で終わらない予実管理を行う
③ 将来の人員配置のシミュレーション——出荷量の予測から必要な投入人時を逆算し、「来週は15%増える見込みだから午前だけ3人増やす」「午後は人員を減らしても処理能力は維持できる」といった意思決定をデータで裏付ける
WMSが担うもの
正しく動かすこと
  • 在庫管理・ロケーション管理
  • 入荷・出荷の作業指示
  • 誤配・欠品の防止
  • 作業の標準化・平準化
「何を・どこで・いつ」を正確にコントロールする。既存WMSはそのまま維持。
Nexa Warehouse-Optimizerが担うもの
効率的に動かすこと
  • 人時生産性のKPI可視化(時間帯別・工程別)
  • 計画と実績の予実管理
  • シフトシミュレーション
  • データに基づく改善PDCAサイクル
WMSのデータを受け取り、分析・改善の機能を追加する。現場を止めずに導入できる。

WMSが現場を正しく動かす仕組みだとすれば、データ分析は現場をより効率的に動かすための仕組みです。明日のシフトをどう組むか、どの工程へ応援を出すか、繁忙日に何人必要か——そうした意思決定を支えるために、人時生産性というKPIがあります。

人時生産性は、現場を評価するための数字ではありません

もちろん、人時生産性だけで倉庫運営の良し悪しを判断できるわけではありません。在庫精度、出荷品質、納期遵守率などと併せて見ることが重要です。

そのうえで、人件費という大きな運営コストを管理する入口として、人時生産性は最も基本的な指標の一つと言えます。日々の改善を積み重ね、限られた人員で安定した物流を実現するための数字です。

物流コスト削減の次の一手を探しているなら、その改善サイクルを無理なく始める方法の一つが、既存のWMSデータを活用した継続的な分析です。

まず自社の人時生産性を把握することから

過去の出荷実績(処理数量・作業人数・作業時間)があれば、自社の人時生産性はその場で算出できます。無料診断では、さらに工程ごとの人員配置と処理能力をもとに、どこがボトルネックになっているかまで確認できます。

自社の条件で、工程別に試してみる 「今の仕組みのまま、何から始めればいいか」という段階からご相談いただけます お問い合わせ
参考資料
・公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査報告書」(2023年度)
・国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」(2015年)