倉庫のセキュリティをどう考えるか
—データ活用時代に求められるネットワークセキュリティの基本
・物流DXが進むほど、なぜセキュリティの重要性が増していくのか
・倉庫特有のセキュリティリスクと、見落とされがちな盲点
・閉域網・ゼロトラスト・MDM・映像管理——押さえておきたい基本の考え方
・KDDIが取り組んできたセキュリティ関連の事例
前回の記事「倉庫DXは通信インフラから始まる」では、現場データをクラウドへ届ける通信インフラの重要性を取り上げました。しかし、データが安定して届くようになると、次に向き合う必要が出てくるのがセキュリティです。
WMS、IoTセンサー、ハンディ端末、監視カメラ——倉庫内でデータを生み出す接点が増えるほど、外部との通信経路も増えていきます。通信経路が増えるということは、それだけ守るべき対象も増えるということです。本記事では、物流倉庫におけるネットワークセキュリティの基本的な考え方と、KDDIが取り組んできた事例を整理します。
物流DXが進むほど、セキュリティの重要性は増していく
紙の帳票と目視確認が中心だった時代の倉庫は、外部ネットワークとの接点がほとんどありませんでした。しかし、WMSがクラウド化され、ハンディ端末がWi-Fiで基幹システムにつながり、監視カメラの映像がクラウドに送られるようになると、状況は大きく変わります。
物流DXが進むにつれて増えていく、外部との接点の例
・WMS/基幹システムとクラウドとの通信
・ハンディ端末・タブレットのWi-Fi/モバイル通信
・IoTセンサー・PLCなど設備データの送信経路
・監視カメラ映像のクラウド転送
・複数拠点間でのデータ集約・共有
これらの接点はいずれも、データ活用を進めるうえで必要なものです。しかし同時に、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクが生じる経路でもあります。「データを活用する」ことと「データを守る」ことは、本来セットで検討すべきテーマです。
倉庫特有のセキュリティリスク
物流倉庫のセキュリティを考えるうえでは、オフィスのIT環境とは異なる、現場特有のリスクを押さえておく必要があります。
セキュリティ対策の2つの基本的な考え方
① 閉域網——そもそもインターネットを経由させない
閉域網(クローズドネットワーク)は、通信の経路そのものをインターネットから切り離す考え方です。拠点間やクラウドとの接続をインターネットを経由せずに構成することで、外部からの不正アクセスの経路そのものを減らすことができます。
WMS・基幹システムとの通信や、IoTセンサーからクラウドまでのデータ経路を、外部にさらさない形で構成したい場合に適した考え方です。通信事業者各社が、こうした閉域網サービスを法人向けに提供しています。
② ゼロトラスト——「すべてのアクセスを検証する」という考え方
ゼロトラストは、「社内だから安全」「社外だから危険」と単純に区別するのではなく、社内・社外を問わず、すべてのアクセスを検証するという考え方です。テレワークやクラウド利用が広がり、守るべき情報が社内ネットワークの外にも存在するようになったことを背景に重視されるようになりました。
倉庫の現場においても、複数拠点からクラウド上のWMSやデータ分析基盤にアクセスする構成が増えており、ゼロトラストの考え方は無関係ではありません。閉域網が通信経路を限定してリスクを低減する考え方であるのに対し、ゼロトラストは、どの経路からのアクセスであっても利用者や端末を都度検証する考え方です。両者は役割が異なるため、組み合わせて利用されることも少なくありません。
用途別に見る、倉庫データの守り方
通信方式と同じように、セキュリティ対策も「何を守るか」によって適した手段が異なります。
| 守るべき対象 | 想定されるリスク | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| WMS・基幹システムとの通信 | 不正アクセス、情報漏洩 | 閉域網で、インターネットを経由しない経路を構成 |
| 現場のハンディ端末・タブレット | 紛失・盗難による情報漏洩 | MDMによる端末の遠隔ロック・遠隔ワイプ・端末管理 |
| 監視カメラ映像・設備の異常監視 | 映像データの管理不備、異常の見落とし | セキュアなクラウドでの映像・センサーの一元管理 |
| クラウド接続全般 | 標的型攻撃、不正アクセス | ゼロトラストによる継続的なアクセス検証 |
「どれか一つを導入すれば万全」というものではなく、通信経路・端末・映像・クラウド接続それぞれに適した対策を組み合わせることが、現実的なセキュリティ対策の考え方になります。
KDDIが取り組んできたセキュリティの事例
① 災害・サイバー攻撃からビジネスを守る——エース株式会社様
かばん・バッグ類を展開するエース株式会社様は、大規模災害やサイバー攻撃からビジネスを守るため、クラウド基盤と閉域ネットワークを組み合わせた環境を構築しました。
導入の決め手として、担当者は「ネットワーク設計からセキュリティ設計、構築、運用監視まで一気通貫で任せられる」というKDDIの対応力を挙げています。ネットワークとセキュリティを別々に検討するのではなく、一体で設計する重要性がうかがえる事例です。
出典:KDDI株式会社「エース株式会社様 導入事例」(biz.kddi.com)
② 現場のモバイル端末を専用ネットワーク+MDMで守る——株式会社北洋銀行様
業種は金融ですが、「現場で使うモバイル端末をどう安全に運用するか」という課題は、倉庫のハンディ端末・タブレット運用にも通じる事例です。北洋銀行様では、渉外担当者が持ち歩くタブレットを専用のネットワーク接続で保護しつつ、MDM(モバイルデバイス管理)の仕組みで端末を一元管理しています。
必要なアプリのみを配信し、業務に関係ない機能を停止、ホワイトリスト方式で業務以外へのアクセスを禁止するなど、MDMによる運用ルールの徹底が、現場のモバイル活用とセキュリティ確保を両立させています。
出典:KDDI株式会社「株式会社北洋銀行様 導入事例」(biz.kddi.com)
③ 監視カメラとセンサーで施設を24時間見守る——アイチ情報システム株式会社様
愛知製鋼グループの情報システム会社であるアイチ情報システム株式会社様は、本社移転に伴い新設したサーバー室について、「休日や担当者不在時のトラブルを事前に察知したい」「遠隔操作できる自動消火設備を備えたい」という課題を抱えていました。
そこで、温湿度センサーと暗視監視カメラをKDDIのクラウドサービスに接続し、24時間365日の遠隔自動監視を実現。異常が発生した際は管理者にメールで通知され、その場で映像を確認しながら初期対応できる体制を構築しました。担当者は「セキュリティレベルが高く、コストパフォーマンスも高い」点を導入の決め手として挙げています。
サーバー室に限らず、工場内の操作室や重要書類の保管室など、倉庫内の管理室・防災センサーの設置にも応用できる考え方です。
出典:KDDI株式会社「サーバー室内の状態を24時間365日遠隔で自動監視。自動消火設備を備えた防災システムを構築」(biz.kddi.com be CONNECTED.)
セキュリティは「後回し」にできない基盤
データ活用が進むほど、守るべき接点は増えていきます。通信インフラが「データを届ける」役割を担うのに対し、セキュリティは「届いたデータを安全に保つ」役割を担います。どちらか一方だけでは、物流DXの基盤としては不十分です。
Nexa Warehouse-Optimizerが分析するデータも、その手前にある通信経路・端末・映像・クラウド接続が安全に保たれていることが前提になります。セキュリティは「導入してから考える」ものではなく、通信インフラと同じタイミングで検討すべき基盤の一部です。
ネクサウェアはKDDIと椿本チエインの合弁会社です。通信インフラの整備からセキュリティ対策、データ分析基盤の導入まで、KDDIグループとして一体でご相談いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。
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