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コラム| 2026年7月24日

繁忙期の出荷遅延は「人手不足だけ」が原因ではない
—波動対応はデータで設計する

波動対応はデータで設計するイメージ図
この記事でわかること
・増員だけではうまくいかない構造的な3つの理由
・なぜ「何人投入するか」より「どこに配置するか」が問題なのか
・平時のデータ蓄積がなければ繁忙期の計画が立てられない理由
・データを使った波動対応の設計ステップ

食品・日用品の特売日、アパレルのセール期間、スマートフォンの新モデル発売、年末商戦——倉庫を持つ多くの業種で、出荷量が短期間に急増する繁忙期は避けられない現象です。

こうした繁忙期に対して、増員・応援投入は当然取るべき対応です。しかし、増員しても出荷が追いつかない、コストが膨らむ割に処理量が伸びない、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

なぜ増員だけでは機能しないのか。そして何が足りないのか——構造から整理します。

①ボトルネック工程に人を入れていない

出荷処理は、入荷・保管・ピッキング・検品・梱包・仕分けなど、複数の工程が連なっています。ライン全体の処理能力は、最も処理能力の低い工程で決まります。他のどの工程をいくら速くしても、最も詰まっている工程のキャパシティ以上に出荷量は増えません。

入荷・格納
→
ピッキング
→
検品・仕分け
▲ ここが詰まっている
→
梱包
→
出荷

上図のように検品・仕分け工程が詰まっているとき、ピッキングや梱包の人員を増やしても、全体の出荷量は増えません。前工程が速くなるほど検品待ちの在庫が積み上がり、出荷エリアが混雑するだけです。

繁忙期に「全体的に人を増やす」という判断をすると、ボトルネックでない工程に人員が集中しがちです。どの工程が詰まっているかを事前に把握していなければ、効果的な配置はできません。

②追加人員の生産性は最初から高くない

繁忙期の増員は、現場に不慣れな人員を急ぎ投入することが多くなります。物流現場の作業には習熟が必要な要素が多く、一般的に新規スタッフの初期生産性は低くなる傾向があります。

一般に、業務に不慣れな作業者は、習熟した作業者と比べて初期の生産性が低くなる傾向があります。さらに、ベテランが教育・サポートに時間を割くことで、既存人員の生産性も一時的に下がります。繁忙期に人を増やしたにもかかわらず、総処理量が想定したほど伸びないという経験は、このメカニズムが背景にあるケースが少なくありません。

繁忙期の増員コストは、時給・交通費・派遣費用だけではありません。教育にかかる既存スタッフの工数、増員後の混雑による動線の乱れ、ミスや手戻りの増加も含めると、実際のコストは表面上の人件費を上回るケースがあります。

③工程別の必要人時を見積もれない

繁忙期前のシフト計画は、多くの現場で担当者の経験と勘に頼っています。「去年の同じ時期はこのくらいだった」「あの担当者が組んでくれれば大丈夫」という形で属人的に決まることが少なくありません。「この出荷量を処理するには工程ごとに何人時必要か」を計算できる状態にある現場は限られています。

この状態では、投入人時が少なすぎて対応しきれないか、多すぎてコストが無駄になるかのどちらかになりがちです。しかも、その判断が正しかったかどうかを繁忙期後に検証する仕組みもないため、翌年も同じ試行錯誤が繰り返されます。

経験と勘によるシフト計画
よく起きる問題
  • 担当者交代でノウハウが消える
  • 必要人時が「感覚」で決まる
  • 過不足の原因を検証できない
  • 毎年同じ繁忙期対応を繰り返す
データによるシフト設計
変わること
  • 出荷量から工程別の必要人時を逆算できる
  • ボトルネック工程への配置根拠が明確になる
  • 計画と実績を比較して翌年に活かせる
  • 担当者が変わっても同じ水準で対応できる

波動対応に必要なのは「平時のデータ蓄積」

繁忙期の人員配置をデータで設計するには、「この出荷量を処理するには工程ごとに何人時かかるか」を計算できなければなりません。その計算の根拠となるのが、平時に継続的に蓄積された工程別の人時生産性データです。

たとえば、ピッキング工程では1人時あたり何件処理できるか。検品工程では何件か。この数値が平時のデータとして蓄積されていれば、繁忙期の出荷計画から「ピッキングには○○人時、検品には○○人時が必要」と逆算できます。ボトルネックになりやすい工程も、平時のデータから事前に特定できます。

WMSには作業実績データが蓄積されていますが、工程別の人時生産性を継続的に分析・管理する機能は、WMSの主要な目的ではないことが多く、データを改善活動に継続的に活用するには、別途分析の仕組みを組み合わせるケースも少なくありません。

データで繁忙期を乗り越えた事例

事例:KDDIの物流センター

波動対応では、「人を増やす」だけでなく、「どの工程に何人配置するか」をデータで判断する取り組みも始まっています。KDDIの物流センターでも、スマートフォン新モデル発売時の出荷量急増に対し、工程別の人時生産性を可視化し、そのデータを人員配置の検討に活用する取り組みを行いました。

その結果、同センターにおける処理量を従来比1.4倍に改善した(2024年8月商用開始)。人員を増やすだけではなく、工程別の配置をデータに基づいて見直したことが、処理量の向上につながった事例です。

Nexa Warehouse-Optimizerが担う役割

Nexa Warehouse-Optimizerは、WMSや作業実績システムのデータを受け取り、KPI可視化・予実管理・シフトシミュレーションをクラウド上で提供するサービスです。繁忙期の波動対応という文脈では、次の4つのフェーズで機能します。

平時
計測する
  • 工程別の処理量・投入人時を自動収集
  • KPIをダッシュボードで継続可視化
  • ボトルネック工程を平時から特定
繁忙期直前
計画する
  • 出荷量の見込みから必要人時を逆算
  • 工程別の配置計画を数値で設計
  • 必要人時の根拠を持って準備
繁忙期当日
判断する
  • 計画と実績の乖離をリアルタイムで確認
  • 詰まっている工程を早期に発見
  • 当日の配置調整に根拠を持てる
繁忙期後
学習する
  • 計画と実績の差異を工程別に検証
  • どの配置が効いたかを定量で振り返る
  • 翌年のシフト設計精度が上がる

重要なのは、既存のWMSや設備を置き換えるのではなく、蓄積されているデータを受け取り「分析・計画・検証」の機能を追加する点です。繁忙期だけのツールではなく、平時から使い続けることで繁忙期対応の精度が毎年高まります。

繁忙期は、その日に備えて始まるものではありません。平時に蓄積したデータがあって初めて、必要人時の見積もりや工程別の配置計画を根拠を持って設計できます。人手不足への対応はもちろん重要ですが、それだけでは繁忙期は乗り切れません。計画・実績・改善を繰り返し、配置判断をデータで行える仕組みを持つことが、これからの波動対応では重要になります。
繁忙期前に「必要人時」を計算できる状態にしたい方へ

Nexa Warehouse-Optimizerは、WMSや作業実績データをもとに、工程別KPIの可視化・シフトシミュレーション・予実管理を提供するクラウドサービスです。平時から人時生産性を蓄積し、繁忙期の必要人時をデータで設計できる環境づくりをご支援します。「まず何から始めればいいか」という段階からご相談ください。

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